国際人材フェア・にいがた2022
ERINAは2021年7月10日(土)、朱鷺メッセ(新潟市中央区)において、新潟県内企業と外国人留学生を対象とした就職相談会「国際人材フェア・にいがた2022」を開催した。本事業は、地方における留学生向け就職相談会として2005年にスタートし、今回で17回目の開催となった。これまでの開催実績は表1の通りである。今回は県内企業17社と、県内在学中の留学生74人が参加した。
実施体制については、昨年と同様に新潟県が主催で、新潟県外国人材受入サポートセンター(新潟県行政書士会)が県から受託して、更にERINAが再受託する形で開催された。
表1 国際人材フェア開催履歴
年度 | 開催日 | 会場 | 参加企業 | 参加留学生 | 内定者 |
2005年 | 10月28日(金) | 長岡商工会議所 | 9社 | 60名 | 5名 |
2006年 | 10月27日(金) | 新潟市民プラザ | 9社 | 53名 | 2名 |
2007年 | 9月21日(金) | 新潟市民プラザ | 14社 | 47名 | 3名 |
2008年 | 5月21日(水) | 新潟市民プラザ | 18社 | 69名 | 6名 |
2009年 | 5月22日(金) | 新潟市民プラザ | 8社 | 47名 | 1名 |
2010年 | 5月21日(金) | 新潟市民プラザ | 22社 | 59名 | 1名 |
2011年 | 6月23日(木) | 新潟市民プラザ | 19社 | 85名 | 4名 |
2012年 | 6月29日(金) | 新潟市民プラザ | 18社 | 86名 | 6名 |
2013年 | 5月30日(木) | 新潟市民プラザ | 16社 | 94名 | 4名 |
6月 8日(土) | アオーレ長岡 | 9社 | 22名 | ||
2014年 | 6月18日(水) | 新潟市民プラザ | 20社 | 85名 | 3名 |
2015年 | 6月18日(木) | 新潟市民プラザ | 27社 | 80名 | 12名 |
2016年 | 6月17日(金) | 新潟市民プラザ | 24社 | 100名 | 6名 |
2017年 | 6月 9日(金) | 新潟市民プラザ | 27社 | 81名 | 7名 |
2018年 | 6月 2日(土) | 朱鷺メッセ | 35社 | 96名 | 10名 |
2019年 | 6月 8日(土) | 朱鷺メッセ | 28社 | 119名 | 12名 |
2020年 | 9月18日(金) | 朱鷺メッセ | 12社 | 98名 | 0名 |
2021年 | 7月10日(土) | 朱鷺メッセ | 17社 | 74名 | 7名 |
計(延べ) | 332社 | 1355名 | 89名 |
※内定者は参加企業へのアンケート調査による結果。
■準備段階
新型コロナウイルス感染状況が続くなか、今年もコロナ対策を行い、開催に向けて準備を進めた。昨年開催した経験1もあって、順調に準備を進めることができた。
留学生向けガイダンスについては、昨年と同様に事前に動画を録画して、インターネット上で配信した。ガイダンスの内容は以下の通りである。
①留学生の就職に伴う在留資格(ビザ)
講演者 | 新潟県外国人材受入サポートセンター 管理責任者 新潟県行政書士会 国際業務委員長 南 直人氏 |
内容 | 留学生が就職する際に取得する主な在留資格「技術・人文知識・国際業務」の内容や許可事例、または「特定活動(本邦大学卒業者)」(告示46号)の内容と具体例などについて詳細な説明がなされた。 |
②留学生OB・OGによる就職・仕事・生活の体験談
講演者 | フジイコーポレーション株式会社 サイフ・バドシャ氏 |
内容 | 現在務めている会社、仕事内容、就職活動に関するアドバイスなどについて紹介を行った。 |
上記の動画2はイベント後もしばらくは公開する予定で、卒業予定の留学生にとって有益な情報になることを期待する。
12020年度の開催実績については、「国際人材フェア・にいがた 2021 開催報告」を参照。https://www.erina.or.jp/activities/business/job_fair/job_fair2021/report/
2動画のURL:https://www.erina.or.jp/activities/business/job_fair/job_fair2022/
■開催概要
月日 | 2021年7月10日(土) |
場所 | 朱鷺メッセ2階 スノーホール(新潟市中央区万代島6-1) |
主催 | 新潟県 |
共催 | 新潟労働局 |
主管 | 新潟県外国人材受入サポートセンター(新潟県行政書士会)、公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA) |
協力 | 新潟地域留学生等交流推進会議、にいがた産業創造機構(NICO)、新潟県商工会議所連合会、新潟経済同友会、新潟県経営者協会、新潟県中小企業団体中央会、新潟県国際交流協会、ジェトロ新潟貿易情報センター、第四北越銀行、大光銀行 |
相談ブース | 新潟労働局(外国人雇用管理アドバイザー)、新潟県外国人材受入サポートセンター(新潟県行政書士会)ビザ相談コーナー、外国人相談センター新潟(新潟県国際交流協会)の紹介コーナー |
参加者 | 県内企業17社、留学生74名 |
■プログラム
13:00 主催者代表挨拶
13:05 就職相談会
就職相談会では留学生がそれぞれ関心のある企業のブースを訪問し、事前に用意したエントリーシート(参加申込書)を企業に提出、採用担当者から企業概要や採用方針などについて説明を聞き、相談を行った。(写真1)
写真1
(出所)ERINA撮影
これと並行して外国人の雇用に関する相談と在留資格変更手続に関する相談(新潟労働局および新潟県外国人材受入サポートセンター)を実施した。(写真2)
写真2
(出所)ERINA撮影
16:00 終了
■開催結果
(1)企業側
県内に事業所を持つ県外の企業も含め参加企業は17社、地域については新潟市に本社・支店を置く企業が7社(41%)で最も多く、次に柏崎市の企業が4社(24%)で、南魚沼市の企業が2社(12%)、村上市、燕市、上越市、佐渡市の企業各1社(6%)が出展した。
業種については製造業が9社(53%)、非製造業が8社(47%)であった。製造業のうち、機械製造業が4社(24%)、金属製品製造業が3社(18%)、食料品製造業が2社(12%)、非製造業は、IT、専門技術サービス、小売・卸売、建設、人材派遣、宿泊、飲食サービス、その他のサービスが各1社(6%)であった。
募集する職種については技術開発が9件(33%)で最も多く、次に海外取引業務が6件(22%)、通訳・翻訳が4件(15%)、企画事務が3件(11%)、法人営業と管理業務がそれぞれ2件(7%)、情報処理が1件(4%)であった。
採用形態に関しては正社員を募集する企業は15社(88%)、正社員あるいは契約社員の採用を予定する企業は2社(12%)であった。希望要件の語学能力については、英語が9社(53%)で最も多く、次に中国語が6社(35%)、その他に韓国語、ベトナム語、ネパール語等があった。
(2)留学生側
参加留学生は74名、国・地域別では、中国28名(38%)、ベトナム15名(20%)、ネパール8名(11%)、モンゴル7名(9%)、スリランカ、バングラデシュがそれぞれ3名(4%)、タイ、ミャンマーがそれぞれ2名(3%)、その他に台湾、インドネシア、スイス、ポーランド、ジンバブエの留学生が参加した。
学校別では、国際外語・観光・エアライン専門学校の留学生が17名(23%)で最も多く、新潟産業大学12名(16%)、新潟大学8名(11%)、新潟ビジネス専門学校、事業創造大学院大学、長岡大学がそれぞれ6名(8%)、国際大学、敬和学園大学がそれぞれ4名(5%)、上越教育大学が3名(4%)、その他に新潟食糧農業大学、長岡公務員・情報ビジネス専門学校、新潟会計ビジネス専門学校、上越公務員・情報ビジネス専門学校、フォーラム情報アカデミー専門学校、国際日本語カレッジ、新潟職業能力開発短期大学校などからの参加もあった。
参加者のうち、男性は35名(47%)、女性は39名(53%)で、理系は12名(16%)、文系は54名(73%)3であった。
3理系・文系に関しては未記入が8件あった
■アンケート結果(企業側・留学生側)
(1)企業側
参加企業に対するアンケート結果4では、「本日のフェアは有意義でしたか?」という質問に対して、参加企業の13社(76%)が「有意義」と答えて、「本日のフェアで採用したい留学生はいましたか?」という質問に対して、3社(18%)は「すぐにでも採用したい留学生がいた」、14社(82%)は「今後試験や面接を重ねて検討したい留学生がいた」と答えた。
企業の留学生採用の理由(図1参照)は、「優秀な人材を確保するため」が76%で最も多く、次に「国際取引など語学力が必要な業務を行うため」が47%、「日本人だけでは十分な人材を確保できないため」が35%と続いた。留学生の採用は、国籍を問わず優秀な人材がいれば採用したいと考えている企業が多い。
4企業アンケートの有効回答数は17社、回答率100%
図1 留学生の採用理由について教えてください(複数回答)
留学生の資質や能力で最も重視するもの(図2参照)は、「日本語能力」が76%で最も多く、次に「専門知識、技術力」と「コミュニケーション能力」が41%、「英語能力」が29%の順だった。留学生の採用において、大半の企業が日本語能力を重視しており、他の要素に比べてその重要度が最も高いことが分かる。
図2 留学生の資質や能力で最も重視するものを教えてください(複数回答、3個まで)
「留学生の就職活動において大学等で指導してほしいことは(図3参照)」という質問に対して、「業界・企業の概要」と「日本の就職活動の仕組み」が47%、次に「日本語能力」が41%と回答が多かった。留学生向けの就職ガイダンス等では、日本の就職活動の仕組みが、留学生にとって理解しづらい内容が多いということに留意して説明を工夫する必要がある。
図3 留学生の就職活動において、大学等で指導して欲しいと思うものは何ですか? (複数回答)
参加企業17社のうち、過去に留学生を採用したことがある企業13社に対して、採用後の状況について追加の質問を行った。
「留学生を採用して良かったことは(図4参照)」という質問に対して、「優秀な人材が確保できた」と答えた企業が12社(92%)で最も多かった。留学生の採用を通じて、求める人材を獲得できたと思う企業が多い。次に「会社全体のグローバル化が進展」が38%、「国際業務の拡大や円滑化」が31%、「日本人社員の異文化・多様性への理解が向上し、社内活性化に繋がった」が23%、「即戦力になった」が15%、「新しいアイデアが生まれた」が8%の順であった。
図4 留学生を採用して良かったことを教えてください(複数回答)
「留学生を採用して苦労したこと(図5参照)」という質問に対して、「在留資格の変更手続きが煩雑」が31%、「意思疎通が困難」が23%、「文化、価値観、考え方などの違いによるトラブルがあった」、「生活面でのフォロー」、「教育・指導の仕方がわからない」がそれぞれ15%であった。
図5 留学生を採用して苦労したことを教えてください(複数回答)
その他の感想としては、「学生の前向きな姿勢に感銘を受けた。また、優秀な学生が多いと思った」、「行政書士や他の出展社と話し知識が増えた」、「新潟にこれだけの留学生がいるということを知っただけでも良かった」、「学生と話が出来てよかった」、「色々な方々と情報交換ができて有意義だった」などの肯定的な意見が多く寄せられた。一方で、「ビザの変更が難しい」など、課題を抱えている企業もあった。
(2)留学生側
留学生に対するアンケート結果5では、回答者の全員が「本日のフェアは有意義であった」、また、全員が「(検討を含めて)就職したい会社があった」と答えた。
日本で働きたい理由(図6参照)については、「日本語を使って仕事をしたいから」が75%で最も多かった。留学生にとって日本語を活用したい気持ちが強く、就職活動の最大の動機となっている。次に「日本企業の技術が高いから」が38%、「日本の文化・サブカルチャーが好きだから」、「日本企業の人材育成は充実しているから」、「将来日本企業の海外拠点で働きたいから」がそれぞれ25%と回答が多かった。
5留学生のアンケート有効回答者数は24人、回答率32%
図6 日本で働きたい理由は何ですか(複数回答、3個まで)
就職したい業種(図7参照)については、「宿泊・飲食業」、「卸売・小売業」がそれぞれ46%、「製造業」が33%、「生活関連サービス・娯楽業」が25%と回答が多かった。参加者のうち、文系の留学生が多いので、海外との接点が多いホテル(宿泊)や商社(卸売)に憧れを持つ留学生が多いと推測する。
図7 入りたい企業の業種は何ですか(複数回答、3個まで)
希望する職種について(図8参照)は、「通訳・翻訳」が63%、「販売・営業」が54%、「貿易業務」が50%と回答が多かった。こちらも、文系の学生の割合が多いので、個人が持つ語学力、国際的資質などを十分発揮できる通訳・翻訳や海外営業、貿易の仕事が人気のようである。
図8 やりたい仕事の内容は何ですか(複数回答、3個まで)
「就職活動で困ったこと」(図9参照)という質問に対して、「外国人留学生向けの求人が少ない」が67%で最も多かった。本来、留学生向けの求人情報が比較的に少ないなか、コロナの影響で、更に情報が少なくなったのではないかと思う。次に「日本語能力や日本社会の文化・習慣の理解に自信がない」が33%、「仕事内容が不明確」が25%、「就職活動の方法が分からない」が21%の順だった。
図9 就職活動で困ったこと、不安に感じたことを教えてください(複数回答、5個まで)
「就職を決める際に、最も重視していること」(図10参照)という質問に対して、「将来性がある」が63%、次に「外国人の採用に実績がある」が46%と回答が多かった。留学生が企業を選ぶ際に、安定性と外国人採用実績を重視することが分かった。ちなみに、今回の国際人材フェアでは、外国人社員が会社説明を行う企業があり、留学生の注目を集めた。
図10 就職を決める際に、最も重視していることは何ですか(複数回答、5個まで)
■終わりに
コロナ禍ではあるが、参加企業が去年に比べて3社増え、景況に回復の兆しが見えてきた。また、一部の企業から事前に開催についての問合せがあり、留学生の採用ニーズがあることが分かった。ただし、コロナ前の状況に戻るには、まだ時間がかかりそうだ。
一方で、留学生の参加者は74人で、昨年より24人減少した。企業からの求人数の減少に加え、留学生の日本企業への就職意欲も低下していると思われる。
今後は、アフターコロナを見据えて、企業と留学生の参加意欲を高めるために関連機関と連携して、セミナー等の開催を通じて、情報発信を継続していく。一日も早くコロナが収束して、通常に戻ることを祈る。
■内定状況
7名(2021年12月現在)