国際人材フェア・にいがた2020

国際人材フェア・にいがた2020開催報告

ERINAは2019年6月8日(土)、朱鷺メッセ(新潟市中央区)において、新潟県内企業と外国人留学生を対象とした就職相談会「国際人材フェア・にいがた2020」を開催した。本事業は、地方における留学生向け就職相談会として2005年にスタートし、今回で15回目の開催となった。これまでの開催実績は表1の通りである。今回は県内企業28社と、過去最多となる留学生119人が参加し、地元テレビ局の取材も入るなど熱気に満ちた開催となった。

表1 国際人材フェア開催履歴

年度 開催日 会場 参加企業 参加留学生 内定者数
2005年 10月28日(金) 長岡商工会議所 9社 60名 5名
2006年 10月27日(金) 新潟市民プラザ 9社 53名 2名
2007年 9月21日(金) 新潟市民プラザ 14社 47名 3名
2008年 5月21日(金) 新潟市民プラザ 18社 69名 6名
2009年 5月22日(金) 新潟市民プラザ 8社 47名 1名
2010年 5月21日(金) 新潟市民プラザ 22社 59名 1名
2011年 6月23日(木) 新潟市民プラザ 19社 85名 4名
2012年 6月29日(金) 新潟市民プラザ 19社 86名 6名
2013年 5月30日(金)
6月8日(土)
新潟市民プラザ
アオーレ長岡
19社
9社
94名
22名
4名
2014年 6月18日(水) 新潟市民プラザ 20社 85名 3名
2015年 6月18日(木) 新潟市民プラザ 27社 80名 12名
2016年 6月17日(金) 新潟市民プラザ 24社 100名 6名
2017年 6月9日(金) 新潟市民プラザ 27社 81名 7名
2018年 6月2日(土) 朱鷺メッセ 35社 96名 10名
2019年 6月 8日(土) 朱鷺メッセ 28社 119名
延べ 303社 1183名 70名
(2019年8月現在)

開催概要

月日 2019年6月8日(土)
会場 朱鷺メッセ2階 スノーホール
新潟市中央区万代島6-1
主催 公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)
共催 新潟労働局
後援 新潟県
協力 新潟地域留学生等交流推進会議、にいがた産業創造機構(NICO)、
新潟県商工会議所連合会、新潟経済同友会、新潟県経営者協会、
新潟県中小企業団体中央会、新潟県国際交流協会、新潟県行政書士会、ジェトロ新潟貿易情報センター、第四銀行、北越銀行
参加者 県内企業28社、留学生119名
相談ブース:新潟労働局(外国人雇用管理アドバイザー)、新潟雇用
労働相談センター、新潟県行政書士会

プログラム

13:00 主催者代表挨拶
13:05 留学生向け就職ガイダンス

  • 留学生の就職に伴う在留資格
    (新潟県行政書士会 国際業務委員長 南直人)
  • 留学生OBによる就職体験談
    (中越運送株式会社 曽紅江(ソウコウコウ))
  • 留学生OBによる就職体験談
    (日東工業株式会社 潘丹丹(ハンタンタン))
14:00 就職相談会

  • 留学生が企業ブースを順次訪問し、企業概要の説明を受け、就職相談を行った。これと並行して外国人の雇用に関する相談(新潟労働局および新潟雇用労働相談センター)、在留資格変更手続に関する相談(新潟県行政書士会)を実施した。
17:00 終了

上記プログラムの通り、就職ガイダンスと就職相談会の2部構成で実施した。就職ガイダンスでは、新潟県行政書士会国際業務委員会の南直人委員長による留学生の就職に伴う在留資格についての説明があった。今回は、本年4月1日施行の改正入管法で創設された新たな在留資格制度である「特定技能」の概要についても補足解説がなされた。その後、過去の「国際人材フェア」を通じて県内企業に就職した留学生OB・OGにより、現在の業務や会社生活、就職活動の心構えなどについて講話があった。就職相談会では留学生がそれぞれ関心のある企業のブースを訪問し、事前に用意したエントリーシート(参加申込書)を企業に提出、採用担当者から企業概要や採用方針などについて説明を聞き、相談を行った。

開催結果

(1)企業側

県内に事業所を持つ県外の企業も含め参加企業は28社、地域については新潟市に本社・支店を置く企業が12社で最も多く、次に長岡市と三条市が各3社、上越市、柏崎市、南魚沼市が各2社、燕市、見附市、南蒲原郡田上町、中魚沼郡津南町の企業各1社が出展した。

業種については製造業が11社で一番多く、食品加工、食品・宿泊業、IT業が各3社、卸売・小売業、サービス業が各2社、建設業、教育業、運輸業、金融・保険業が各1社であった。

職種については販売・営業と技術開発の募集が各15件、技術開発のうち、情報処理関連の募集が6件、通訳・翻訳と設計の募集が5件で、貿易業務の募集が4件、海外業務の募集が2件であった。

採用形態に関しては、正社員を募集する企業は22社、正社員あるいは契約社員の採用予定とする企業は5社で、契約社員のみとする企業は1社であった。

募集する留学生の語学能力については、中国語能力に関連する求人が14社で最も多く、英語能力が13社、韓国語能力とロシア語能力が各3社、ベトナム語能力が2社、ヒンドゥー語能力が1社であった。

(2)学生側

参加留学生は119名、うち中国からの留学生が51名で、全体の43%を占めた。次いでベトナム人留学生が18名、スリランカ人留学生が11名、モンゴル人留学生が9名、バングラデシュ人留学生が5名、ネパール、台湾、フィリピンからの留学生がそれぞれ4名、タイ人留学生が2名、ほかマレーシア、ミャンマー、インド、ロシア、ポルトガル、エジプト、セネガル、カメルーン、マラウィ、モザンビークなどの留学生が参加した。

学校別では、国際外語・観光・エアライン専門学校の留学生が24名(20%)で最も多く、新潟産業大学21名、新潟大学20名、事業創造大学院大学11名、フォーラム情報アカデミー専門学校8名、国際大学7名、長岡技術科学大学5名、上越教育大学、敬和学園大学、新潟ビジネス専門学校がそれぞれ4名、新潟経営大学3名、新潟工業短期大学と長岡公務員・情報ビジネス専門学校がそれぞれ2名、ほか新潟工科大学、上越公務員・情報ビジネス専門学校、大阪市立大学などの参加もあった。

参加者のうち、男性は69名、女性は50名で、文系は82名、理系など(未記入を含む)は37人であった。

企業・留学生の感想

参加企業に対するアンケート結果1によれば、「本日のフェアは有意義でしたか?」という質問に対して、参加企業の23社(88%)が「有意義」と答えた。また、「本日のフェアで採用したい留学生はいましたか?」という質問に対して、6社(24%)は「すぐにでも採用したい留学生がいた」、18社(72%)は「今後試験や面接を重ねて検討したい留学生がいた」と答え、参加企業が手応えを感じていることが伺える。企業における留学生採用の理由(複数選択)については、「専門能力を有する人材を獲得し事業を高度化するため」と答えた企業が50%で最も多く、次に「社内の多様性を高め職場を活性化するため」が46%、「留学生の母国への海外事業を開拓・拡大するため」、「日本人だけでは十分な人材を確保できないため」がそれぞれ42%、「留学生の母国に関わらず海外事業を開拓・拡大するため」が38%であった。国際人材フェアに対する感想については、「様々な国の留学生が日本(新潟)で就職しようと考えていることが分かった」、「想定外の国からの留学生が多かったため、新たな縁が出来てよかった」、「留学生の在留ビザ申請の講話が非常に勉強になった」などの好評価がある一方、「留学生がビザに関する知識を更に高めた後に参加してもらえるとよりスムーズになる」、「申込用紙にある企業への質問を事前に知りたい」などの改善要望もあった。

また、留学生に対するアンケート結果によれば、回答者2の9割以上が「本日のフェアは有意義であった」、6割が「今後試験・面接を経て就職出来る可能性がある」と回答したほか、「新しい経験があった」、「(就職の)チャンスが多い」などの意見も寄せられ、概ね好意的な評価が伺える。

企業アンケートの有効回答社数は26)
設問により異なるが、留学生アンケートの有効回答者数は50前後

総括

企業に関しては、当初30社から参加の申込があったが、2社が参加辞退となり、最終的に28社の企業が参加した。参加企業数は昨年と比較、7社(-20%)減少した。参加企業の確保は、景気や企業の経営状況等に左右されるため難しい問題であるが、これまでの経験を踏まえて、今後継続して企業に対するアプローチを行い、効果的に企業への周知および参加を促す方法を検討したい。

留学生に関しては、今年の参加者は119人で、昨年より23人(23%)増え、過去最多となった。留学生の募集は各学校の担当者を通じて行っており、今回も各学校の担当者が積極的に周知・募集を行ったことで留学生参加者の増加に繋がったと考えている。今後も各学校と緊密に連携を取りながら、一層留学生への情報提供や参加募集に力を入れる。

課題に関しては、前述の参加企業の減少のほか、企業側のニーズと留学生の専門が若干ミスマッチしている問題が挙げられる。参加企業のうち、約半数が「技術開発」(理工系)を求めているのに対して、今回、理工系の留学生参加が約30人程度と全体に占める割合が少なく(25%)、企業からは多少の不満の声が聞かれた。学校によれば、国籍を問わず理工系の学生に対する需要が高く、早い時期から、企業から直接学校の指導教授に対する人材紹介のアプローチがあったという。今後、理工系の人材に対する企業側のニーズに如何に対応していくかが課題である。

日本政府の取組

文部科学省が策定した「留学生30万人計画」3の下、留学生は年々増加しており、日本学生支援機構(以下、JASSO)の「平成30年度外国人留学生在籍状況調査」によれば、29万8980人(うち日本語教育機関在籍者:9万79人)で、2020年に30万人という計画目標をほぼ達成している。

留学生が増加している一方で、卒業後に日本で就職する者は、日本側が期待するほど多くないのが現状である。JASSOの調査によると、6割の外国人留学生が日本での就職を希望しているものの、実際、卒業後に日本で就職する者は3割程度にとどまるとされている。このミスマッチを解消し、就職率の向上を図ることが少子高齢化による労働人口の減少に直面している日本にとって大きな課題となっている。

このため、日本政府は、2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」4において、以下に記すような外国人材に関する「政策課題と施策目標」を掲げている。

  • 「高度な知識・技能を有する外国人材の積極的な受け入れ」
  • 「優秀な外国人留学生の国内就職率の向上」
  • 「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みの構築」
  • 「外国人受け入れ環境の整備」など

上記のうち「優秀な外国人留学生の国内就職率の向上」に関し、「未来投資戦略2018」で掲げている新たに講ずべき具体的な施策を引用する

〇 外国人留学生等の国内就職促進のための政府横断的な取組
(1) 外国人留学生などの外国人材受入れ施策の有機的連携

  • 我が国企業のニーズに応じた外国人留学生などの外国人材の受入れを促進するべく、関係府省庁間での連携を深め、関係省庁による以下の様々な施策等を総合的に実施するための体制を構築する。
    在外公館、日本貿易振興機構(JETRO)、国際交流基金、日本学生支援機構(JASSO)などの海外事務所及び国内大学の海外拠点の緊密な連携の下、入国前に日本語教育を提供するとともに、大学等での教育研究、卒業後の就職などのキャリアパスをはじめとした日本留学の魅力を統合的に発信し、一気通貫での日本への送り出しにつなげる体制を構築する。
  • 大学・企業・自治体等の連携の下、外国人留学生と中堅・中小企業双方の事情に精通する専門家の活用等を通じ、地域の中堅・中小企業のニーズを踏まえた専門教育や、ビジネス日本語・キャリア教育等日本企業への就職に際し求められるスキルを在学中から習得させるとともに、インターンシップ、マッチング事業等を通じて国内企業への就職につなげる仕組みを作る。また、留学生と企業とのマッチングの機会を設けるため、ハローワークの外国人雇用サービスセンター等の増設により、留学生と企業とのマッチングを推進する。

(2) JETROのプラットフォームを通じた分かりやすい情報発信・ワンストップサービスの提供
関係府省庁間の連携の下、各施策の有機的な連携を図るための仕組みとして、JETROによるプラットフォームを本年度から始動し、来年度から本格稼働させる。

  • 日本の生活・就労環境、入管制度、高度外国人材の採用に関心がある中堅・中小企業等の情報、日本での就労を希望する外国人留学生が在籍する大学等の情報など一連の情報とともに、関係省庁等が実施するインターンシップ、ジョブフェア、セミナーなどの各種イベント情報をJETROに集約し、外国人及び我が国企業双方の目線に立った分かりやすい形で発信するポータルサイトを構築する。
  • 企業や高度外国人材・外国人留学生からの採用や就労に関する問い合わせを一元的に回答するワンストップサービスを提供する。
  • 高度外国人材に精通した専門家を活用し、中堅・中小企業に対して採用に際しての手続や課題解決、外国人材が活躍するための就労環境整備、我が国での安定的な定着までの伴走型支援を提供する。

2008年1月の第169回国会において、当時の福田康夫元総理が施政方針演説の中で打ち出したことにより、同年7月に文部科学省によって策定された計画の一つ。2020年に日本国内の外国人留学生を30万人に増やすというもの(出所:ウィキペディア)。
4  第3次安倍内閣の成長戦略。2017年6月に閣議決定され、2018年6月に改訂版が閣議決定された(出所:ウィキペディア)。
5『未来投資戦略2018-「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革-』、2018年6月15日

終わりに

国際人材フェアを企業・留学生双方にとってより有意義な事業としていくためには、もとよりERINAだけでは限界があり、企業・学校・行政など「オール新潟」での取り組みが求められる。上記の「外国人留学生等の国内就職促進のための政府横断的な取組」も注視しながら、今後もERINAは各関連機関との連携を深め、新しい試み、例えば留学生による県内企業視察ツアーやインターンシップの紹介などを通じて、留学生の就職と県内企業の外国人材活用を支援していきたい。

内定状況

9社 12名(2019年12月現在)