国際人材フェア・にいがた2008
「国際人材フェア・にいがた2008」報告 (2008年5月21日開催) [390KB]
ERINAは5月21日(水)、新潟県内の外国人留学生を対象としたジョブフェア「国際人材フェア・にいがた2008」を開催した。
当フェアは、北東アジア等海外ビジネスに必要な人材を求める県内企業と日本で就職を希望する留学生、双方のニーズをマッチングさせることで、海外ビジネスの進展と地域経済の活性化を図ることを目的に、2005年以降ERINAが取り組んできた事業である。これまで延べ160名の留学生が参加し、12名が就職に結びついた。4回目の開催となった今回は、企業数、留学生数ともに昨年を上回り、過去最大規模となった。
開催概要
日時: | 平成20年5月21日(水)13:00~17:00 |
会場: | 新潟市民プラザ |
主催: | (財)環日本海経済研究所(ERINA) |
共催: | 新潟労働局 |
後援: | 新潟県 |
協力: | 新潟地域留学生等交流推進会議、新潟県商工会議所連合会、新潟県経営者協会、新潟経済同友会、ジェトロ新潟貿易情報センター |
参加者: | 企業18社、留学生69名、その他2団体(新潟労働局(外国人雇用管理アドバイザー)、新潟県行政書士会(在留資格変更手続相談コーナー)) |
内定者: | 3名(2008年8月末現在) |
プログラム
13:00 | 主催者代表・共催者代表挨拶 |
13:10 | 留学生向けセミナー
|
14:00 | 就職相談会開始
|
17:00 | 終了 |
フェアの模様
当日は就職セミナーとジョブフェアの2部構成。セミナーでは、まず厚生労働省職業安定局外国人雇用対策課作成のDVDを放映し、就職活動に必要な基本的事項の理解を深めた。続いて就職・採用アナリストの斎藤幸江氏が、面接時における自己アピールをテーマに講演を行った。講演の要旨は以下のとおりである。
- 企業の採用基準は語学力・異文化重視から人物重視にシフトしている。
- 自分らしさ、自分の強みを明確に伝えることが必要。
- 「今」の姿よりも、「今」に繋がる過去の経験、プロセスがアピールポイントとなる。
- 留学生の採用実績がない企業に対しては、日本での生活「実績」を伝え、採用者の不安を取り除くことが効果的。
- 留学生を採用する企業は B to B ビジネスが中心。
- 大企業より中小企業の方が採用に意欲的。規模、業種、職種等にこだわり過ぎず、視野を拡げ、新しい企業、知らない企業にも向き合おう。
講師の熱い講演に啓発されたのか、講演終了後、留学生は一斉に企業ブースを訪問し、各社の説明に熱心に耳を傾けていた。昨年に比べ20名以上も参加者が増えたことに加え、TV局、新聞社等取材陣が多数集まったこともあり、会場は熱気に包まれた。
フェア終了後の学生アンケートを見ると、「多くの企業の方々と話ができ、就職活動を続ける上で役に立った。」、「大企業だけでなく中小企業の方々と話をする機会ができ、就職へのチャンスが増えた」などポジティブな回答が多かったものの「現実の厳しさが良く分かった」という声もあった。留学生の感じ方は様々であるが、採用担当者と直接話をしたことで多くの事を得たことは確かなようである。
また、参加企業からも「潜在能力の高いと思われる学生と接触できた」、「新しい人材に触れてよい意味で軽いショックを受けた」、「国際性の必要性を再認識できた」等フェア参加に対して好意的な反応が多かった。
時間帯により人数の差は多少あったものの、終了時間ぎりぎりまで残り、企業担当者に話を聞く留学生の姿が多く見られ、彼らの就職に対する強い意欲を垣間見ることができた。フェアは盛況の中無事終了した。
開催結果
1) 企業
18社が参加、その内9社が新規参加である。業種別では製造業、ソフトウェア開発などが多いが、今回初めて旅行業2社が参加した。近年、アジア諸国の経済成長に伴い日本へのインバウンド旅行者が増えており、今後もニーズは高まっていくと思われる。旅行業は留学生の特性が活きる業種であり、就職先として有望といえる。
2) 留学生
69名が参加。国籍別では中国が60名と8割以上を占め、次いでマレーシア4名、バングラデシュ2名等である。学校別では私立大学が多い。参加者の約80%が文系であり、理系は少ない。また、学部生の割合は全体の約65%で大学院生は約25%である。私立大学の留学生のほとんどが「中国籍、文系、学部卒」であるため、これらの偏りを解消するためにも今後は、国立大学の留学生の参加を促す必要がある。
3) 採用状況
2008年8月末現在、3名の内定・採用を確認した。国籍は全て中国である。その内の1名は既修了者である。留学生、特に大学院生は日本人学生に比べ、就職活動の開始時期が遅くなる傾向にあるが、卒業(修了)後も就職活動を続ける場合は、在留資格の延長(最長180日間)が認められることから、今後は既卒(修了)者の参加も受け入れたい。なお、各社の採用結果については、未回答の企業があり現在集計の途中である。内定者が更に増えることを期待したい。
4) フェアを終えての所感
前述のとおり、今回は企業数、留学生数ともに過去最大規模となった。特に企業数は2005年の9社から倍増しており、留学生に対する関心が徐々に高まってきたことが伺える。
※2008年の内定・採用者数は2008年8月末時点
また、参加者(社)数が増加したもう一つの要因として、開催時期を早めたことが挙げられる。これまでは日本人学生の採用活動終了後の9月、10月に開催してきたが、昨今の就職活動の早期化に合わせ、日本人学生の採用時期に近い5月に変更した。フェア終了後のアンケートにおいても「5月開催で適当」が多数を占めた。
参加企業は増加傾向であり、毎年数名の内定者が生まれてきたが、これを更に増やすには相当数の企業、留学生の参加が必要である。企業ニーズに合致した留学生とのマッチングは難しく、アンケートでも企業、留学生双方より参加者(社)数を増やしてほしいとの声が上がっている。県内留学生の卒業(修了)見込者が約300名、県内企業の海外進出企業が147社(平成19年度新潟県知事政策局調査)であることからすると、まだまだ参加者(社)数を増やす余地はある。今後、フェア参加に繋げるための効果的なPRの時期、方法を探っていく次第である。
次回の開催については今後作業を進めていくが、海外ビジネスを検討している、あるいは国籍を問わず優秀な人材が欲しいと考える企業の方々にはぜひ一度参加して頂きたい(参加費無料)。多くの企業にとって留学生採用の経験はないことと思うが、「週間エコノミスト」2008年9月2日号の誌面にあるとおり「案ずるより産むが易し」である。労働政策研究・研修機構が実施した「外国人留学生の採用に関する調査」には、以下のように報告されている。
- 留学生を採用した企業の8割近くが今後も留学生の採用を予定。
- 留学生を採用した企業の半数以上が「採用しても特に問題は生じていない」と回答。
- 留学生を採用した企業ほど留学生に対し「仕事への意欲が高い、」、「能力が高い」と思う割合が高い。留学生を採用しない企業ほどマイナスイメージが膨張。
- 留学生を採用しなかった理由のトップは「受け入れ体制が整っていない」。一方、留学生を採用した企業の4割以上が事前の対処策を「何もしていない。」。
つまり、最初の一歩を踏み出すには勇気がいるが、やってみれば案外うまくいく‐食わず嫌いであることを示している。経済や企業活動がグローバル化する中、企業にとっても多様な価値観を持った人材が必要であり、留学生がその源泉となり得るのではないだろうか。
以上、ERINAとしては今後もこの取り組みを続け、1名でも多くの内定者を生み出すことで継続可能な事業として定着させ、さらに地域貢献への取り組みとしてERINAへの評価向上に繋がれば幸いである。
会場内の模様
開始前(会場入口)![]() |
開会あいさつ![]() |
就職アナリスト講演![]() |
就職相談会の様子
取材の様子
参加企業一覧
企業名 | 主な業務内容 | 希望する人材・職種 | 語学力※ |
愛宕商事(株) | 旅行業 | インバウンド企画、営業、手配など | 中、朝、露など |
アドバンエンジ(株) | 工業炉を中心とした機械設備の設計・製造 | 機械設備の設計・製作管理、海外営業など | 英、中、日 |
(株)イーオス21 | ソフトウェア開発、IT業務コンサルティングなど | ソフトウェア開発業務(プログラマ、システムエンジンニア) | 中、朝、日、タイなど |
キヤノンイメージングシステムズ(株) | プリンタードライバ等の研究開発、無線LAN製品等の企画開発販売など | ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア開発 | 中、日 |
(株)コイデエンジニアリング | FA(省力化)装置の設計製作 | 機械設計技術者 | 中、日 |
(株)サカブン | 携帯電話等に用いられる精密プラスチック金型の製作 | 中国現地法人製造管理職(候補) | 中、日 |
(株)ササゲリバース | 輸入品の国内販売(カタログギフト商社)、国産品、農産品及びキッチン雑貨の輸出 | 企画、営業及びその他関連業務 | 英、日 |
(有)サントレーディング | 自動車部品の輸出入 | オペレーター | 露、日 |
(株)シアンス | ソフトウェア開発、Webサイトの制作など | システムエンジニア、Webデザイナー | 英、日 |
(株)シーキューブ | 製造業、金型メーカー向け設計・製造・解析システムの販売など | 海外人材派遣コンサルティング部員 | 中、日 |
中越運送(株) | 貨物運送事業、国際輸送業など | 国際輸送業務 | 英、中、朝、露、日 |
ナミックス(株) | 電子部品用導電・絶縁材料の研究、開発など | 技術職、営業職 | 英、中、日 |
(株)新潟エージェンシー | 旅行業(営業、手配、通訳、翻訳) | 旅行業務全般 | 中、露、日 |
(株)BSNアイネット | ITソリューション事業、アウトソーシング事業、ソフトウェア開発など | システムエンジニアなど | 中、日 |
(株)ピーコック | 和風ファーストフード店の経営、冷凍食品の製造など | ベトナム・中国・韓国のビジネス通訳、ベトナム工場の管理業務など | 中、朝、日、ベトナム |
(株)ブルボン | 菓子、飲料、食品の製造販売 | 海外事業展開要員(海外営業、貿易実務、原料調達等) | 英、中、日 |
(株)ニイガタマシンテクノ | 工作機械並びに電動式射出成型機の製造・販売 | メンテナンス、トラブル対応、技術者育成 | 英、日、ベトナム |
日本精機(株) | 計器、センサー等精密機械の製造・販売など | 海外現地法人に対する業務支援 | 英、中、露、日 |
※英=英語、中=中国語、朝=朝鮮語、露=ロシア語、日=日本語
参加留学生データ
参加人数
69名(男46名、女23名)
国籍
中国60名、マレーシア7名、韓国2名、ロシア1名、バングラデシュ1名、アメリカ1名
学校名
新潟産業大学 | 21名 |
敬和学園大学 | 16名 |
新潟大学 | 14名 |
上越教育大学 | 4名 |
新潟経営大学 | 3名 |
国際エアリゾート専門学校 | 3名 |
長岡技術科学大学 | 2名 |
長岡大学 | 2名 |
新潟会計ビジネス専門学校 | 2名 |
新潟薬科大学 | 1名 |
その他 | 1名 |
学位等
学部45名、修士課程14名、博士課程3名、専修学校5名、不明2名
※一部既卒業(修了)者を含む。
文系・理系
文系55名、理系8名、その他(専修学校)5名、不明1名
学部・専攻
人文学 | 27名 |
経済・経営学 | 17名 |
工学 | 6名 |
教育学 | 4名 |
観光 | 3名 |
会計 | 2名 |
産業・社会学 | 2名 |
法学 | 1名 |
環境学 | 1名 |
薬学 | 1名 |
不明 | 5名 |
採用状況
企業名 | 内定者数 | 国籍 |
---|---|---|
愛宕商事(株) | 1名 | 中国 |
アドバンエンジ(株) | 1名 | 中国 |
(株)イーオス21 | ||
キヤノンイメージングシステムズ(株) | ||
(株)コイデエンジニアリング | ||
(株)サカブン | ||
(株)ササゲリバース | 1名 | 中国 |
(有)サントレーディング | ||
(株)シアンス | ||
(株)シーキューブ | 1名 | 中国 |
中越運送(株) | ||
ナミックス(株) | ||
(株)新潟エージェンシー | 1名 | 中国 |
(株)BSNアイネット | ||
(株)ピーコック | 1名 | 中国 |
(株)ブルボン | ||
(株)ニイガタマシンテクノ | ||
日本精機(株) |