首都機能移転の陰で
韓国・世宗(セジョン)特別自治市は、ソウル市から120Km程南の忠清南道に新たに建設された、国の行政機能の一部を担う新都市だ。廬武鉉政権時に計画された遷都構想が、憲法裁判所の違憲判決によって取りやめとなり、その代替案として建設が進められた。
世宗特別自治市は2012年に道・広域市(日本の都道府県)と同格の自治体として発足した。その後2014年までに、外交部、統一部など例外的にソウルに残ったものを除き、行政官庁の世宗市への移転が終了した。企画財政部(日本の財務省)、産業通商資源部(日本の経済産業省)といった主要経済官庁も移転した。しかし現在の市の人口は11万人程度に留まっている。
官庁の移転に伴って、韓国の政策形成に関わる政府系シンクタンクも大部分がこの都市に移転した。ERINAと関係の深い対外経済政策研究院(KIEP)、韓国開発研究院(KDI)なども現在は世宗市にあり、初めて訪れた。
ソウルからは最寄りの五松駅まで高速鉄道KTXで約50分、さらに世宗市の中心部までは、ガラガラに空いている幹線道路を使っても車で30分以上かかった。何とも遠い。6車線の道路の真ん中の2車線は、新潟市でも9月から導入が予定されているBRTの専用車線=写真=とのことだったが、現在の交通量ではとてもそれが必要には思われない。
大統領府や国会は現在もソウルに残っているので、各官庁の幹部の移動だけでも、かなりの負担となっているようだ。中途半端な首都機能の移転によって行政効率が高まったと思っている国民は、おそらく皆無だろう。
ERINA(環日本海経済研究所) 調査研究部主任研究員 中島朋義
新潟日報ERINAレター2015年06月22日掲載