リスクの意識に変化
中東呼吸器症候群(MERS)の影響で延期になっていた第14回北東アジア天然ガス・パイプライン国際会議=写真は2013年の第13回会議=が8月27日、28日にソウルで開催される。
当初開催が予定されていた6月末は、MERSの流行が拡大中だったが、予定通り開催すべきとの意見もあった。各国関係者がメール協議をする中で意外だったのは、中国からの参加者予定者が感染リスクを理由に、延期を強く主張したことだった。
2008年のメラミン入り粉ミルク事件以降、中国社会は徐々にリスクに敏感になってきた。大切な一人っ子、あるいは一人孫の健康が最優先というところから始まり、自分自身の健康を気にして商品を選ぶようになった。公害への対応も少しずつ進んでいるようだ。こうした変化が日本製品の需要を高めた面もある。
加えて、最近では失敗のリスクを恐れる風潮も出てきた。習近平政権が進める綱紀粛正の嵐の中で、高級幹部らが首をすくめていることは、半ば常識だ。それにも増して、高度経済成長を通じて、ちょっとした財産や地位、安定した生活など「守るべきもの」ができてしまった多くの都市住民の存在が社会の雰囲気を変えているように思う。
あらゆる層の人たちが、豊かな明日を信じて、失敗を恐れずに猪突猛進していたころ、中国に行くたびに熱気にあてられていた。今話題の「爆買い」にはその熱が残っているし、中国人は相変わらず元気だ。ただ、体感温度はかなり下がった感じだ。
ERINA(環日本海経済研究所) 調査研究部長・主任研究員 新井洋史
新潟日報ERINAレター2015年08月24日掲載