輸送を支える大動脈
シベリア鉄道という言葉に旅情をかき立てられる人は多いのではないか。モスクワとウラジオストクを結ぶ世界最長の鉄道路線で、全長9288キロメートルを示すモニュメントがウラジオストク駅にある=写真=。全線を走破する長距離列車は、その名も「ロシア号」。列車番号はモスクワ行が001番、ウラジオストク行が002番で、まさにロシアを代表する列車である。
しかし、観光客の利用はシベリア鉄道の役割のほんの一部でしかない。貨物輸送の大動脈としてのシベリア鉄道の存在が、ロシアという国を支えていると言っても過言ではない。年間1億トンという途方もない量の貨物を輸送しているのだ。その中には、石炭や非鉄金属、木材など極東の港から輸出して、外貨収入に貢献しているものも多い。全長1キロメートルにもなる長い貨物列車が走る光景は、ロシアという国のスケールの大きさを感じさせる。
そのシベリア鉄道について、近年ロシアが力を入れていることの一つが、高速コンテナ列車の運行だ。最も速い列車で、極東の港湾からモスクワまで7日間で到着するようになった。これは、6泊7日の「ロシア号」とほぼ同じ速さだ。
コンテナ貨物と違い、7日間もの時間が取れないという忙しい日本人には、ウラジオストクとハバロフスクの間の「オケアン号」をお勧めしたい。夜乗車して、翌朝到着する夜行列車だ。今年の夏も、新潟空港から両都市に向けて毎週直行便が飛ぶ予定になっている。通貨ルーブルの下落で、現地のレストランなどもぐっと安くなった。シベリア鉄道デビューの好機をお見逃しなく。
ERINA(環日本海経済研究所) 調査研究部長 新井洋史
新潟日報ERINAレター2016年03月21日掲載