建物再活用に効率性

11月上旬、中国・吉林省長春市を訪れた。長春市の緯度は北海道と同じぐらいで、人口はおよそ750万人という大都市だ。11月の長春の気温は0度を挟んで変動していたため、暖房の熱源による空気の悪さを覚悟していたが、きれいな青空が見えていた。

長春は旧満州国の首都・新京が所在していたので、かつての日本が多くの建造物を建築した。その中にはいくつか取り壊されたものもあるが、現在活用されているものもある。こうした建物や旧満州国博物館などにかつては日本人観光客も多く訪れていたそうだが、近年は減少したという。写真の日本の国会議事堂に似た建物は、満州時代の国務院であり、今は、吉林大学の医学部が使用している。これらの建物の中には基礎工事のみが行われた状態で終戦を迎えたが、その後、共産党政府により当初の設計図通りに建設されたものもあるという。

経済学は、希少な資源を最適に配分する方法について追及する学問だが、政治にはそれを実行することが求められる。一方で政治的意思決定は、感情的なものにも左右されることもある。当時の政府や国民の感情からすると、日本の建設した建物を活用することには抵抗があったかもしれない。しかし効率性の観点から考えると、建造物を壊し、そこに一から建物を建築するということをせず、建造物の利用を選んだことは、国民生活の向上に資する優れた決断だったのではないだろうか。

新潟日報エリナレター掲載