魅力的な地方暮らし

昨年の秋から在外研究で米国テネシー州のノックスビル市に滞在し、地域経済と地方暮らしの観点から米国の中小都市を見つめる機会を得た。

南部に属するテネシー州は海への出口がなく、八つの州に囲まれている内陸州だ。州の東部に位置するノックスビルは、州都のナッシュビルと大都市のメンフィスに次ぎ、州内3番目の人口規模を持つものの、20万人を下回る中小都市。しかし、ここにテネシー大学の本拠地が置かれている。

ノックスビル市内には目立った工場はなく、銀行、保険、小売、飲食、自動車販売などのサービス業が中心だ。広々とした道幅の道路が延び、車の数が多く、歩いている人は少ない。川沿いの公園には多くの野球場とフットボール場があり、数人でも自由に使える。

人々は定時に帰宅し家族と過ごしている。週末は庭の手入れや家事をし、図書館や教会で地域の人々が交流している。自宅にいてもユーチューブやツイッターなどで発信し、外の世界とつながっている。

ノックスビル市近郊ではさまざまな祭りや文化的な行事が開催され、祝日はにぎわいを見せる=写真=。全国を回る専門の業者が普段見られない商品や芸術品を出品して地域の住民を楽しませている。人々の表情は明るく、大きな声で笑う。

人口減少、一極集中に伴って地方の将来が心配されている時代にあって、地方の問題は日本をはじめ、中国やロシアなどの北東アジア諸国も直面する課題である。魅力的な地方暮らしを実現するには、経済の論理だけでは説明されない心の豊かさも大切だと実感する。

新潟日報エリナレター掲載