「オンライン」の限界
昨年まで、ERINA職員は北東アジア内外の各地を訪問して、現地の人の話を聞き、また北東アジア協力の意義を訴え、人の輪を広げてきた。今年はオンライン会議で代用することが増えた。
9月7日~10日、ロシア・イルクーツク市=写真=で開催された国際会議は、現地参加者とオンライン参加者が混在する形だった。画面上で、旧知の参加者と「再会」できたことはよかった。通常は深夜発着となる現地への移動を省略できたこともよかった。もちろん、会議参加者の発言から多くの情報を得ることができた。経費も節約できて、いいことばかりのようだ。
しかし、オンライン会議には限界がある。単なる情報伝達を超えて、人間関係を築き、さらに深めることは難しい。そこには、休憩時間、ホテルと会議場間の移動車中、食事時間、会議後の視察・見学など、従来の国際会議につきものの人と人とが打ち解ける機会がない。これでは人の輪は広がらない。
バーチャル旅行やオンライン飲み会などにも似たようなことが言えそうだ。現地ガイドの説明にチャットで質問したり、同じ酒肴をそれぞれの手元に用意して歓談したりすれば、それなりの臨場感はある。しかし、腹に響く花火の迫力は伝わらない。浴衣の群れの人いきれも。
思えば、文字のない口承文学の時代から、仮想体験は実体験へのあこがれをかきたてるスパイスだった。技術は進歩してもヒトは変わらないということか。
ERINA(環日本海経済研究所) 調査研究部長 新井洋史
新潟日報ERINAレター2020年09月21日掲載