国際情勢 どこ吹く風
4月に韓国に出張した。首都ソウルの他、首都機能移転に熱心な韓国の政策で全国あちこちに中央行政機関や国営のシンクタンクが移転しているため、いろいろな街を訪れた。
日本海側の江原道江陵市にある大学を訪れた後、釜山市にあるシンクタンクを訪問するために移動中、以前は鳥取県境港市、現在は京都府舞鶴市とウラジオストクを結ぶフェリー航路(旅客輸送は現在休止中)の中継点となっている東海市に列車の乗り換えのため、1時間ほど滞在した。
駅前広場を見ると、「ロシア料理」とドアに大書した食堂「カフェ・カザフスタン」=写真=が目に入った。どんな料理を出しているのかと入ってみた。
メニューにはボルシチ、ペリメニ、ブリヌイなどのロシア料理の他、グヤーシュ(元はハンガリー料理)、プロフ、サムサ、マンティ、シュルパなどの中央アジアの料理が並んでいた。店員はカザフスタンから来た高麗人(朝鮮半島からロシア・沿海州などに移り住んでいたが、スターリンの命令でカザフスタンやウズベキスタンなど中央アジアに追放された)のようだった。
食堂ではロシアや中央アジアの食材も販売しており、韓国で作られたプロフなど中央アジア料理の缶詰も売られていた。東海港や墨湖港にはロシアと結ぶ船舶が多く入港するので、ロシア料理の需要もそれなりにあるのだろう。
韓国はウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁をそれほど強くは行っていない。国際情勢の変化をものともせず、たくましく生きる人たちの息吹を感じた瞬間だった。
ERINA(環日本海経済研究所) 調査研究部主任研究員 三村光弘
新潟日報ERINAレター2022年05月16日掲載