ボリショイ劇場

2月某日、モスクワの朝の気温は氷点下25度。ナポレオンもヒトラーも退却を余儀なくされたという厳寒のモスクワだが、コンサートやバレエ等の楽しみがある。この時期、ボリショイ劇場=写真=では毎夜バレエやオペラを上演している。幸運にも当夜のバレエのチケットを開演数時間前に窓口で入手(900ルーブル:1ルーブル=3.8円程度)。

午後7時の開演前の劇場内レストランはシャンペンやサンドイッチをつまむ客で賑わう。客の多くは家族連れのロシア市民だが外国人の姿もちらほら。各階に設けられたクロークにコートを預け、30ルーブル払うとオペラグラスを貸してくれる。私の席は正面バルコニー中段の一列目と舞台の奥までよく見える絶好の位置。この劇場のバルコニーは金色の装飾が背後の赤のベルベットに映える豪華なインテリアだ。当夜のプログラムはバレエ「眠れる森の美女」。1899年に当劇場で初演されて以来、当夜が第524回目の上演という十八番だけに、踊りは言うまでもなく、舞台装置、演出、衣装、オーケストラなど隅々にまで伝統の重みがひしひしと伝わってくる。ドラマ性が強く、登場人物も多い大掛かりな作品だが踊り手は脇役や子役に至るまで粒ぞろい。人気の踊り手が登場すると拍手が沸き起こり、名演技にはブラボーの声。終幕後、夜10時を廻ってもカーテンコールが続く。社会主義のソ連が自由経済のロシアに大転換しても揺るがないロシアの伝統芸術に酔いしれた一夜だった。

ロシア極東の都市でもこのような芸術鑑賞ができれば日本人観光客を呼ぶこともできるのではないかと思う。海外でコンサートやバレエを楽しむたびに感じるのだが、日本ではとてつもなく料金が高い。

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新潟日報エリナレター掲載