エネルギー問題「壁」築くな
とうとう先物市場の原油価格が1バレル100ドルを超えた。2度のオイルショックを乗り越え、石油価格への耐性を強めた日本経済であるが、ここまでガソリン代が高くなると一庶民としては痛い。
今月、約2週間にわたり、世界各地で国際エネルギー情勢の意見交換を重ねた。各地の専門家たちは、産油・産ガス大国であるロシアとどう向き合うのか、という話題でもちきりだ。出張は、かつて東西が壁で隔てられたベルリンから始まり、今も朝鮮半島を南北に分断する38度線の以南約50kmに位置するソウルに終わった。〓写真〓
「資源の争奪戦」というイメージが世界中のマスコミを賑わせている。中国やインドといった人口大国の経済急成長、産油国による資源管理の強化を背景とした石油価格の高騰に伴い、人々は不安なイメージを抱く。
とはいえ、石油市場の需給バランスはどこまで逼迫しているのだろうか。世界的な危機感を背景としたマネーゲームが必ずしも需給の実態を反映していない点は、専門家の間では共通の理解になりつつある。
今、最も恐れるべきことは、必ずしもエネルギー供給の途絶ではない。誤情報に踊らされた妄想が先行し、消費国間や消費国と生産国との間で不要な対立の芽が膨むことだ。
今回、生産国と消費国の間に見えない「壁」が高くなりつつあることを肌身に感じた。最大の原因は、双方が内向きになることで、誤解が生じていることだ。
いまや遺跡として僅かに残されたベルリンの壁を見た時、20世紀に人類が犯した愚かな過ちを痛感した。私たちはエネルギーをめぐり「新たな壁」を築いてはならない。あえて侃々諤々の議論を重ねて相互理解を深め、むしろエネルギー問題を通じて国際理解を図りたい。真の友人とは、本音をぶつけ合って壁を壊していくものだろう。
ERINA(環日本海経済研究所) 伊藤 庄一
新潟日報ERINAレター2007年11月27日掲載