米国民主主義に学びたい
11月初めから12月頭にかけて、ベルリン、パリ、ロンドン、ワシントンDCへと出張が続いた。各国で世界金融危機の暗雲が立ちこめている。どこまで深刻化するのか、いつまで続くのか、人々は不安の色を隠せない。
そんな御時世だが、一つのテーマに話がおよぶと人々の顔が和む。11月4日に米国史上初となる、非白人系大統領候補の当選が決まったことだ。バラク・オバマ次期大統領は、「チェンジ」をキャッチフレーズに選挙戦を展開したが、事前に優勢と報道されても本当に勝つのか、開票結果が出るまで疑った人々は多かったはずだ。しかし、わずか40~50年前に黒人の公民権運動が世界の注目を集めた米国では、若者中心の下からの運動が、かつて想像もできなかったことを実現した。
イラクの戦況悪化や米国の「独走」が目立ったG.W.ブッシュ政権下で、ヨーロッパでも同国のいう「民主主義」に疑問の声が上がった。ところが、今回の大統領選後、ある一流新聞の第1面を「我々はヨーロッパでオバマを生み出せるのか」という記事が飾った。皮肉にも、米国同様に移民社会のヨーロッパには、自分たちが求める民主主義とは何か、という切実な問題が突きつけられることになった。
さて、日本はどうか。今日、国民に自らの情熱のかぎり夢を語れるような政治家がどれだけいるだろうか。小中学生は、社会科の授業で「国民主権」という言葉を教わっている。親たちも一緒に、日本の民主主義とは何なのかを考えてみるいい機会かもしれない。
クリスマスを迎えるホワイトハウス
ERINA(環日本海経済研究所) 伊藤 庄一
新潟日報ERINAレター2008年12月16日掲載