「鶴城」経済の変化垣間見る
6月中旬、中国黒龍江省第2の都市・チチハルを出張で訪れた。日本ではまだ馴染みの薄い名前だが、現地のダフール語の「辺境」または「天然牧場」から由来するという。
大型国有企業の集積地として成長してきたチチハルは、改革開放期以降、計画経済から市場経済への移行という変化に適応できず、沿海部に比べて大きく出遅れた。しかし近年、経済改革の深化に伴い、チチハル経済は伝統産業(工作機械、列車車両製造、軍需産業、化学工業)に加え、緑色食品の生産も好調に推移している。さらに、2004年に打ち出された「ハルビン・大慶・チチハル工業回廊」の具現化により、チチハルは今後の黒龍江省経済発展の中核都市の一つとして注目されつつある。
現地調査の中で、行政関係者と大学の専門家による物流関連の説明会に立ち会う機会があったが、昼食時間になっても真剣な議論が続いていた。この様子から、変わりつつあるチチハル経済の姿を垣間見た気がした。
黒龍江省有数の工業都市でありながら、チチハルは「鶴城(鶴の里)」とも呼ばれる。地元関係者の案内で一面に広がる湿地帯を車で走り抜け、チチハル市街区から東南へ約26kmに位置する「扎龍自然保護区」を視察した。この保護区は世界最大の野生丹頂鶴の繁殖・生息地で、中国最大の丹頂鶴人工繁殖基地だと紹介され、丹頂鶴の放鳥も見学できた〓写真〓。
市内に戻る途中、現地の人々が利用する田舎料理店に行った。店の窓から優雅で美しい野生丹頂鶴を眺めながら、素朴で美味しい料理を味わったことは一生忘れられない思い出となった。
ERINA(環日本海経済研究所) 朱永浩
新潟日報ERINAレター2009年06月30日掲載