中国進出 人件費増が課題

ERINAは昨年、新潟県の委託で県内企業による中国進出の実態と課題について調査を行った。県内企業85社にアンケート調査を行い、その中の15社に対してヒアリング調査を実施した。その結果、県内企業による中国進出の実態が明らかになり、特に労働コストの上昇による課題が浮き彫りになった。

中国における労働コストの上昇の要因は、人件費の高騰、労働契約法の改定、熟練した人材の雇用難、一般労働者の人手不足などが挙げられる。2010年に中国の地方政府は最低賃金を一斉に改定し、各地で最低賃金が大幅に増加した〓グラフ参照〓。

ある県内企業は、上海市で1996年頃500元台だった賃金が、2010年には1,100元を超え2倍以上になったと訴えた。中国政府は2007年に労働契約法を改定し、雇用契約を3回連続更新すると終身雇用にしなければならないと明記した。終身雇用を避けるために3回目の更新の前に従業員を解雇する企業もあった。有能な技術者、財務・経理担当者など熟練した人材の不足も改善されていない。ある地方都市に進出した県内企業は有能な財務スタッフを採用できず、煩雑な手続きを要する国際送金にしばしば問題が生じると明かした。沿海部を中心に一般労働者の人手不足も表面化している。

しかしながら、中国進出は生産コストの削減、仕入コストの削減、売上の増加、優秀な人材の確保、有益な情報の取得などに貢献すると評価している県内企業が多い。労働コストの上昇が長期的には中国の内需拡大と市場の成長に寄与し、県内企業のビジネスの進展に繋がることを願いたい。

中国の主な地域別最低賃金と対前回改定上昇率(2010年末、ジェトロ資料より筆者作成)

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注:地域によって社会保障金と住宅積立金が含まれない場合もあり、単純比較はできない

新潟日報ERINAレター掲載