伝統技法守る人気酒
先月、中国瀋陽市にある「天江老龍口醸造有限公司」という酒造メーカーを訪ねた。社名の略称でもある「老龍口(ラオロンコウ)」ブランドは、昔から地元の人々に親しまれてきた白酒(バイチュウ)の銘柄だ。白酒とは中国の宴席に欠かせない蒸留酒(通常35~60度)で、その原料はコーリャン、小麦、米などの穀物を用いる。
老龍口の創業は康熙元年(1662年)と言われ、実に350年の歴史を持つ。清朝初期の頃からあった窖池(発酵槽)や、麹、原酒造りの技法は、今でも受け継がれている。そして、敷地内にある万隆泉から汲み上げる水は現在も仕込み水として使われている。2008年には、この伝統釀造技術が評価され、国家級無形文化遺産リストに登録された。
酒造見学では、国家伝統技法伝承者の李玉恒氏から昔ながらの醸造法を説明して頂き、その職人魂とこだわり、そして誇りを垣間みることができた。李氏は直径2メートルほどの蒸留釜〓写真〓の垂口からほとばしり出る原酒の試飲も勧めてくれた。アルコール度数68度の原酒を口に含むと、気品ある香りとまろやかな味で(意外にも!)飲み易かった。
近年、激しい競争を繰り広げる中国白酒業界の中、老龍口は瀋陽のリーディング企業として着実に業績を伸ばしている。地元客をメインターゲットに展開する積極的なマーケティング活動、経営戦略の一貫性などがその成功要因のようだ。しかし、「大きく強くよりも長く」という経営理念にも表れているように、老龍口の伝統的技法を守り続けることがその強みの源泉と言えよう。
ERINA(環日本海経済研究所) 朱永浩
新潟日報ERINAレター2012年05月21日掲載