平壌での南北首脳会談を受けて

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6月13日、金大中韓国大統領が平壌に降り立った瞬間、朝鮮半島の歴史の歯車は大きな音を立てて動いた。「出会いだけで意味がある」と韓国当局がさかんに過度の期待を戒めていた南北首脳会談は予期した以上の成果をあげた。金大中大統領と金正日国防委員長の単独会談は2回にわたって行われ、歴史的な南北共同宣言が署名された。

金正日委員長は、華やかな演出で金大中大統領を遇した。自ら順安空港に大統領を出迎え、宿舎までともに乗用車に乗り、沿道には60万人の歓迎の群衆を配した。脚の悪い金大中大統領に合わせて歩幅を調節したり、夫人への配慮を示すなど立派にホスト役を務めた。

金正日委員長は、世界の目が平壌に集まっていることを十分に理解し、意識していたようだ。金大統領との最初の会談で「世界が注目しています。2泊3日の間に答えてあげなければなりません」と強い意欲を表明したことはその現れだ。次の日には韓国のテレビを夜半まで見ていたことも明らかにした。

共同宣言では、統一問題の自主的解決と、北側の低い段階の連邦制案と南側の連合制案の共通性の認定、という統一問題に関する合意が達成され、さらに韓国側が離散家族、北朝鮮側が経済協力という「実利」をとりあった。韓国側は金正日委員長のソウル訪問の約束も取り付けた。特に経済協力に関しては、「民族経済を均衡的に発展させる」という言葉が盛り込まれた。北朝鮮の経済を韓国のレベルにまで引き上げることを意味するとすれば、大きすぎる約束というべきだろう。

経済支援という本音はともかく、北朝鮮側は今回の南北会談を「統一への第一歩」と位置付けており、共同宣言で南北の統一案のすり合わせという合意が達成されたことは大きな意味を持っている。これは故金日成主席の遺訓を果たすことになるからだ。また、自主的統一で合意されたことは、外部勢力の介入を拒否することにつながり、在韓米軍撤退を主張する根拠を北朝鮮に与えることになろう。

金正日委員長のソウル訪問は「適切な時期」に行うことが合意された。ただし、行くからには、金大中大統領の訪朝を上回る成果がもたらされる確約がなければならないだろう。適切な時期というのは、そうした条件が整った時ということだ。そしてその条件は、南北の連邦制・連合制案のすり合わせで何らかの合意を見ることではないだろうか。

今回の会談では、金正日委員長のイメージが大きく改善された。しかし、北朝鮮側が変化を希望しているという幻想は持つべきではない。北朝鮮が首脳会談に踏み切った動機は、むしろ、現体制を維持するためだ。韓国内に過度の期待が生まれると、揺り戻しの幅が大きなものとなろう。

平壌会談で生彩を放っていたのは確かに金正日委員長だった。ユーモアを交えた余裕のある話しっぷりは、謎解きにも似た興味と相まって、見るものを魅了した。

しかし、合意の立役者は、国民の期待を背負い、自らの政治的生命を賭けて平壌に乗り込んだ金大中大統領だ。金正日委員長の流れるようなサインとは対照的に、共同宣言に記された金大中大統領のサインは、これまでの長い道程の思いのたけを刻み込むかのように律儀で丁寧なものだった。