日本はどこへ向かうのか? ―訪中小感―

|中国

昨年秋、西安と大連で久しぶりに日系企業を訪問する機会があった。訪問先3社という小さな調査旅行ではあったけれども、深い印象を受けた。

日本企業が中国に生産拠点を移す、という類の報道は相変わらず多い。今回訪問した3社は、ミシン、電子機器、テレビと業種はまちまちだったが、いずれも今後中国への生産移管をさらに進める計画を立てている。日本には大量生産機能は残らないだろう、というのが現地担当者の一致した見方だった。改めて現場で聞いて実感は強まったものの、それ自体耳新しい話ではない。

肝心なのはその先である。これらの企業はもともとご多分に漏れず、大部分の部品・原材料を主に日本から輸入して中国で組み立て、最終製品を輸出するというパターンだった。だが近年はコスト削減のため、中国での部品・原材料の調達を増やしてきた。現地調達への切り換え当初は、もっぱら周辺に進出した日系企業からの調達だった。そのなかで、さらにコストを切り下げるため、比較的簡単な部材を中心に、現地の地場企業からの調達も行われはじめた。

中国の工業製品の価格は安いが品質は悪い。それが長年、我々が抱いてきた通念である。地場企業からの調達は、品質・納期などあらゆる問題で担当者を悩ませた。

そんな事情が、このところ急に変わってきたようだ。

この2年くらいの間に中国で調達できる部品・原材料の品質が目に見えて向上してきたという点で、今回訪問した3社の見方は驚くほど一致していた。部品の供給地として際だって有力なのが華南の珠江デルタ地域と上海を中心とする長江デルタ地域である。ことに電子関係の部品では、華南の地場産業に対する日系関係者の評価は高い。大連の電子機器メーカーは、ある基幹部品を同じ大連に進出した日系部品メーカーから購入しているが、実は華南の地場メーカーから買えば2割は安い。そして品質も、ほぼ変わらない。つきあいがあるので切り換えにくいが、本音を言えば切り換えたい。外資・地場の部品メーカーが集積する華南は競争が激烈なので、価格は不断に下がっている。調達先として地場が日系と対等に競争し、場合によっては日系を凌ぐという状況が生まれてきたのである。

これと似たことが、日系企業の生産現場でも起きている。中国では安い若年労働力を大量に雇える。だがその「安く」雇われた方の労働者にとって、外資企業で働いて稼ぐ賃金は、出身地の農村での稼ぎと比較すれば十分に高給だ。だから一生懸命働く。企業側は「安い」労働者をふんだんに使って、例えば製品の全数検査が可能になる。さて、日本ではどうだろうか。そもそも若年労働力が集まらない。無理して集めても、さほどやる気がない。

つまり、こと大量生産の場合は、今や日本より中国の方が、手をかけた丁寧な生産ができるのだ。その結果、同じ日本企業が日本の管理と技術を使って作るのなら、日本で作るより中国で作る方が品質がよいということになる。今回訪問先で何度かこの話を聞いて、少し前にアパレル・メーカーの調査で同じ話を聞いたことを思い出した。

中国の産業発展は今、新たな段階にさしかかっている。中国製品の品質に対する評価が改まるにつれ、モノを大量に安く生産する機能は中国に加速度的に集中していくだろう。それでは日本は何をするのか。開発に特化する?それで日本国内の雇用を確保できるのか?工業大国として台頭する中国との間に、日本はどのような分業関係を取り結ぶべきなのか。我々は真剣に答えを模索すべき時に来ている。