遺訓政治脱皮と朝鮮式改革開放の始動 ―北東アジア経済協力への積極的影響―

|中国

1月15日から20日にかけて、北朝鮮の金正日総書記が中国を非公式訪問し、90年代の10年間に飛躍的発展を遂げた上海を視察した。上海の経済発展を大いに称え、「朝鮮式改革開放政策」をとる姿勢を世界に示唆した。これは昨年5月の訪中や6月の南北首脳会談に次ぐ重大出来事で、今後の北東アジアに深遠な影響を及ぼすであろう。

1994年金日成が亡くなると、金正日は3年間喪に服し、遺訓政治による体制維持に努めた。また厳しい経済危機と国際環境の中で、軍事優先路線を取ってきた。そして1999年後半から遺訓政治脱皮を目指し、昨年の南北首脳会談によって、それがよりはっきりしてきた。今回の金正日訪中では、更に北朝鮮が軍事優先路線から経済優先路線、少なくとも両者平行の路線に転換する意志がはっきり打ち出された。つまり中国の改革開放政策への批判(一昨年まで)から評価へ(昨年5月時点)、評価から導入へ(今回の訪中)と大きく変化した。それは金正日現体制の下での朝鮮式改革開放政策が始動することを意味しよう。

注目すべきことは、金正日が用意周到に路線転換を図っていることである。1月4日付の労働新聞には金総書記の発言録として、経済再建のための「新思考」など様々な新しい言葉が報道されたとのことである。これは昨年後半に、北朝鮮内部で路線転換の世論準備がなされたことを意味する。

ここ十数年、北朝鮮が中国のような改革開放路線を取ることをすべての国が望んでいた。今、それが現実となりつつある。改革開放が現体制の崩壊を導くため、北朝鮮の路線転換は本質的に不可能という懐疑的見方が多かったが、ここ一年半の動きをみると本格的転換が図られつつあり、明るい展望が開ける。

確かに「核問題」「ミサイル問題」「拉致問題」「補償問題」などにより、米朝、日朝関係はなかなか改善を見ないという路線転換の阻害要因もあるが、中国の改革開放初期と比べて有利な条件も多々備えている。

先ず中国の経験を取り入れることができ、「後発性利益」を享受できる。体制を維持しながらいかに市場経済化を進めるか。中国とベトナムの経験はよい参考になり、よりスムーズに行われる可能性がある。

次にカリスマ性のメリットを活かすことができる。中国の場合、毛沢東への個人崇拝から脱皮するのにかなり苦労した。しかし北朝鮮では金日成思想の継承と発展は殆ど抵抗なく推進できよう。改革初期においては多くの矛盾を顕在化させるため、「開発独裁」が必要となる。やり方次第では、金正日の持つカリスマ性はプラス要因となりうる。

第三に安全保障問題が中国ほど厳しくない。北朝鮮の「軍事冒険路線」は、対中対ロ関係悪化の中で取られた。現在ではこの二国との関係が改善された上、韓国との関係もよいため、「安全保障危機」からは脱しつつある。中国は台湾問題で、常に米、日と緊張関係にあったし、今もそれが続いている。

最後に、中国と韓国からの経済支援が得られる。北朝鮮の路線転換で最も利益を得るのは中国と韓国である。中国はかつてのような無償援助は控えるであろうが、「ODA方式」の経済協力を積極的に推進しよう。韓国もまた然りである。

ブッシュ政権誕生によって、アメリカの外交戦略は同盟国との関係強化が標榜され、今後数年、対北朝鮮対中国政策は厳しくなる可能性がある。日本の政局に変化が起きない限り、日朝関係に大きな改善は見られず、冷たい関係が持続される可能性が高い。そのような場合、先ず中国、韓国、北朝鮮主導による北東アジア経済協力が進み、一定の段階に達した時点で、日本やアメリカ資本も参入するということになろう。