ロシア新政権の経済改革を進めるために

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今年6月末に新政権の経済政策、7月初めに大統領の年次教書が発表された。ここで新政権が、経済改革を進めるにあたり情報公開と透明性を掲げ、「法の下の平等」を打ち出し、汚職追放を強く訴えていることは高く評価したい。これらは今、ロシアで最も欠けている要素である。確かにロシアの経済状況は98年夏の金融危機を脱し、油価や通貨切り下げなどの外的要因によって改善した。しかし、新政権が自ら触れている通り、ロシア政府、ロシアの銀行、自国通貨に対する内外の信用は依然低く、資本逃避も続いている。これら問題点の存在がロシア国民及び外国人のロシア政府に対する信頼を大きく損ねており、経済改革を行う上で決定的な障害となっている。

現在IMFなど国際金融機関はロシア政府と新経済プログラムを巡り協議している。そこで、せっかくロシア政府が重要政策課題として透明性や情報公開を掲げたのであるから、それを後押しするためにも、是非とも次の2点を融資条件に含めてもらいたい。

(1)大統領府、ロシア政府及び中央銀行の内外資産公表

ロシア政府は、金融危機で一方的に国債の棒引きを行い、ロンドンクラブの旧ソ連債権者に約37%の債権を削減させたが、今年4月26日、議会資産委員会が明らかにしたところによると、国家の海外資産は推定30億ドルから4000億ドルにも昇るが、実際に把握できているのは1100万ドル相当の不動産だけである。95年、財務省は海外資産管理のデータベースを作ろうとしたが、資金不足で断念した。98年には西側調査機関であるクロル・アソシエイツ社が大統領府の依頼で国家資産の査定を行ったが、公表されなかった。議会が国家の海外資産に関する文書を入手する方法は限られており、真相は闇のままである。また「祖国―全ロシア」出身のリシネンコ同委員会副委員長は「国家の海外資産は、90年代に大統領府資産担当のボロディン氏の下、不正に管理外に置かれた。しかしクレムリンは依然真剣な調査に乗り出していない」と非難した。昨年、ボロディン氏自身もNTVテレビで「大統領府は78国に6500億ドルの資産を持っている」と発言している。また海外への資本逃避が毎年150億-200億ドルあるともいわれている。また昨年は、中銀の海外子会社FIMACO等による資産隠し問題が発生している。つまり、ロシアにどれだけの資産があるのか非常に不透明である。信用を構築するためには資産規模を公表することが不可欠である。国際金融機関は、簡単に言うとロシアの年間の財政、国際収支と外貨準備の観点で返済能力を判断しているが、返済できる既存資産にもっと注視すべきだと思う。

(2)独占企業体及び土地私有化の不正排除

新経済政策の中に、独占企業体(ガスプロム、UES、鉄道省)のリストラ(分社化)や土地の私有化促進等が盛られているが、多くのロシア国民は、これら政策が、過去の民営化と同じくまた不透明な手続きで再現されるのではないかと懸念している。民営化されたノリルスク・ニッケル社が不当に廉価で払い下げられたとして、今年7月連邦検察庁が前オネクシムバンク頭取及び元副首相のポターニン氏に追加支払い請求を行ったことからも明白なように、民営化が、国際機関に近い改革派といわれる人物を含めた一部の者に利するように行われたことは周知の事実である。また民営化を推進した国際機関は、これら不正に対し公に非難しなかった。そのため、ロシア国民にとって民営化は汚職や不正の象徴となってしまい、政府や国際機関への信頼を低下させることになった。新経済政策で謳われる独占企業体の分社化や土地の私有化はこれまで国際機関も勧告している。しかし結果だけではなく、今後は過程において透明性が確保されたか、不正がなかったかという点を重視した融資条件を付すべきであろう。