対露直接投資でロシア政府にのぞむこと

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2000年のロシア経済は、2年連続のプラス成長、財政も黒字となり外貨準備も年末には過去最高の300億ドル近くに達すると予測されるなど好調に推移しており、2001年も石油国際価格の大幅な下落がない限り、プラス成長が期待できると見られている。国際格付け機関ムーディーズ社は、11月、同国のソブリン格付に相当する外貨建て長期債券の格付けをこれまでの「B3」から「B2」へ引き上げた。このような事象を背景に、「バスに乗り遅れるな」論が出始めており、ロシア政府の直接投資担当者らから、「日本はなぜ直接投資をしないのか」といった発言がまた強まり始めている。

1997年から2000年までのモスクワ駐在時代、実際にこのような担当者らと直接意見交換を行ったが、彼等の大半は、ロシアに進出した日本企業がどのような問題に直面しているかを知らず、当然改善の努力もしていない。しかし、こちら側が具体例をあげて説明すると、それはひどいと理解してもらえるので、日本側としても「なぜ日本は投資をしないのか」との問いかけには、受け流さずに具体的な例をあげて必ず説明し、日本企業の現状をロシア政府に理解させて状況を改善させなければならない。

それにしても、政府の政策担当者等からこのような発言がなされる度に感じるのが、ロシア政府は市場経済の基本は「信用」や「信頼」であるということを十分認識していないのではないかとういうことである。日本の対ロシア向け直接投資は、ロシア経済が良くなったからといって簡単に増加するものではない。日本の対露直接投資が慎重である最大の理由は、日系企業が対露ビジネスで直面している問題に対しロシア側が真剣に取り組んでこなかった、すなわち信用を築く努力を怠ってきたためである。一方、欧米企業は政府間で積極的に問題に取り組み、様々な特典を勝ち取ってきた。

経済が回復基調となり、「投資しなければ損をする」と呼び掛けるロシア政府は、日本企業が現在、どのような姿勢でいるか理解していない。日本企業は、すでにロシアに進出した日系企業が抱えている問題で、ロシア政府マターについてプーチン新政権がどのように解決するのか注視しているのである。例えば、木材加工関連の日系合弁企業は、輸出にかかる付加価値税の還付問題でロシア政府を提訴した。政府は、本来輸出すれば付加価値税を企業に還付する義務があるのだが、財政が苦しいため、「提訴されない限り、還付するな」と地方の税務署に内々に指示を出しているという情報が広まっているためだ。このように、ロシア政府は本来払うべきものを払わないで「今年の財政は黒字だ」と胸を張って説明している。新政権が法律の遵守を標榜するのであれば、法律で決められている付加価値税還付を即実行してもらいたいものである。

現在、新政権が投資環境整備に力を入れ、いろいろな法律整備を図ろうとしていることについては評価したいが、それを実のあるものにするためには、現在生じている問題点を一つ一つ解決し、ロシアへの信用を回復させることが必要であろう。