パリクラブ債務不払い問題について

|ロシア

今年の1月、パリクラブ(債権国)との合意も無しに、ロシア政府は一方的に返済期限が到来した旧ソ連債務の元本返済をストップした。その後ドイツを筆頭とする債権各国の反発を買うと同時に、IMFからも債務繰り延べの同意が得られなかったことなどから、ロシア政府は2001年に返済期限が到来する旧ソ連債務返済分を全て実行することを約束し、延滞分を含め返済を開始した。今回の債務支払い停止は、これまで債務問題処理で名を挙げたカシヤノフ首相の意向といわれているが、ロシア政府の信頼回復を重点に掲げるプーチン大統領が、このような愚考を許してしまったことは残念である。同大統領の経済顧問は昨年から2001年のパリクラブ債務を支払うようプーチン大統領に助言していたそうだ。

ロシアは98年の金融危機を脱し、ここ2年経済成長を遂げ、新大統領を迎え政治も安定し、失墜した信用を徐々に取り戻しつつあったのに、今回の不払い問題により、ロシアに対する信頼に再度傷をつけたことは否定できない。特に国際金融関係者の間では、「ロシアの政府関係者は各国を訪問し、GDPのプラス成長、財政収支の黒字化、経常収支の大幅黒字、それに伴う外貨準備高の倍増など胸を張ってマクロ経済状況の大幅な改善の説明をしていたので、2001年の対外債務返済能力については懸念していなかった。しかし蓋を開けたら、今年度の連邦政府予算にはパリクラブの元本返済分を計上していないことと、2003年はロシアの返済額が膨らむのでそのために外貨を保留しておく必要があることなどを事由に、返済を停止してしまった。これではいくら経済調査を行い、返済能力を調べても意味がないと言われている。またパリクラブ関係者も、「ロシアのように経済状況は良く、国際収支も黒字で、6-7か月分の輸入額に匹敵する外貨準備がある国に対して、上記事由により債務返済の繰り延べを認めたら、全ての債務国が予算に返済額を手当てしていないので繰り延べしてくれということになってしまう。ロシアはパリクラブメンバーであり、かつG8メンバーなのだから、自国のことだけではなく、その行為がどのような結果を招くか考えてほしいものだ」とロシアの対応を批判していた。

先月、モスクワを訪問し、本件に関し政府関係者やビジネスマンと話したところ、大半のロシア人から「ロシアの首脳陣は『信用』、『信頼』という言葉をよく口にするが、本当にその意味を理解していない。もしわかっていれば、今回のような不払いはしなかっただろう。今回の不払い問題はロシア政府にとっていい勉強になったのではないか」、「今度の件で、ロシアは国際社会に甘えてはならないということが良く分かった」など、ロシア政府の対応に批判的な意見を聞くことが出来、安心した。このような言葉にロシアの首脳陣は耳を傾け、二度とこのような愚考を繰り返さないでもらいたいものだ。