ソ連って何?

|ロシア

ロシア事情の授業の最初に、新入生にアンケートをして、ロシア・ソ連について何を知っているか答えてもらった。

何十項目かをあげ、それぞれについて、「A.一応知っている」、「B.聞いたことはある」、「C.聞いたこともない」の3つの中から答を選んでもらったもの。

30人の回答者の大半はゴルバチョフ、プーチンを「一応知っている」だったが、ブレジネフについてはAとBが合計で4%、KGBはAが1人だけ、ガガーリンがA,B合計3人、スプートニクはA,B合計2人、赤の広場を知っていたのが2人だけ。

ニコライ2世や血の日曜日を3分の1が知っていたのは高校の授業で習ったためだろう。だが、ソルジェニーツィンを知っていたのは1人だけ。

考えてみれば、ソ連が崩壊した1991年に、この世代はまだ小学校の3,4年制だった。一党独裁も反体制派も「それって何?」。ソ連についての基礎知識はおろか、「おそろしい」、「暗い」といった印象すら残っていないのも不思議はない。

こんな当たり前のことに今さら気づいて反省させられたのは、われわれ古くからの研究者は、それぞれ自分が専門とする狭い分野を深く細かく研究しながら、世間一般の人々のロシアについての知識と視点の変化についてあまり考えてこなかったな、ということだ。たとえば、「ソ連は別におそろしい国ではないんですよ」と話すことですら、おそろしいソ連についての記憶がない受け手にとっては、「変なことを力んで言っている人」ということになる。

いま日本では、ほとんど不当と言えるほどにまでロシアについての関心が薄く、ロシアを学ぶ市民や学生の数が少なくなってしまった。ロシアと長年つき合って来た人間として「さみしい」などと言っている情況ではない。大げさにいえば、将来的に日本の国益が損なわれるかもしれないと心配になるほどの事態だ。

専門家がロシアについて書き、話すことは、受け手である国民、とくに若い世代の視点を出発点にして、そこから無理なく関心を広げてゆくようなものでなければならない、と痛感している。