朝鮮の未決済債務問題

|朝鮮半島

筆者は本年6月迄決済協の代表を9年間勤めてきたので、此のオピニオンコーナーではやはり未決済問題に就いて書くべきかと思う。与えられた3回を(1)朝鮮側(債務国)の現状、(2)債権国側の現状、(2)問題解決へ向けて、と云うテーマに分けて書く予定なので御関心を持たれる方の御叱正、御意見を賜れば幸甚である。

(1)朝鮮側(債務国)の現状

70年代前半、金日成主席は韓国の急激な工業化に気付き、対抗上から日本・西欧から資本財の導入を図った。折からの六ヵ年計画には盛り込まれていなかった事と、73年・79年の二度に亘るオイルショックで決済用のハードカレンシー確保が困難となり、日本とは83年締結の第三次リスケが決済実行されぬまま現在に至っているし、西欧の銀行団よりは87年デフォールト宣言が発せられた。

朝鮮は自国の対外債務に就いて公式発表はしていない。債権国側の資料提供に基づくOECD報告に依れば、97年の対外債務総額は75億ドルである。累積利息や、オープン勘定(中国元・ルーブル等)の為替レート評価の問題も含めて大雑把に100億ドルは有るとの見方が通用している。IMFの「重債務貧困国」の定義に従い一人当たりGNP700ドル以下・債務返済比率2.2以上の尺度を適用すると、90年代後半は間違いなく此の範疇に入ると筆者は観測している。貧困国の議論は別として、朝鮮の重債務度は極めて深刻である。

90年代の朝鮮の年平均輸出額は10億ドルである(これは各国の朝鮮よりの輸入額集計に依るもので確度が高いデータである)。従って債務返済比率7.5~10となるが、此の数値は極東・東南アジアでは突出している。此の状態で他国から貿易信用を得るのは不可能に近い。

IMFでも重債務国の債務免除が論じられた由だが、一時的な救いとはなっても再び重債務に陥るのは明らかで、並行してインフラ整備・産業開発・人材育成等の為の資金や各種援助を提供する必要が有ると云われているようだ。

数年前、朝鮮の貿易銀行担当者が債務免除に就いて控えめな発言をした事が有った。実験的な経済開放政策は未だ成果が認められていないし、「ウリ式開放政策」と称するものの内容の明確な説明を聞かされていない。債務問題はこんな環境と20年に及ぶ無為の期間に風化してしまい、最早貿易・経済担当官僚の念頭に浮かぶ事も無いのではとさえ思われる。

この文章を書いている最中、北朝鮮女子サッカーチームが中国・日本という強豪を破って優勝したとの朗報が入ってきた。

「北の人々に幸あれ」。