朝鮮の未決済債務問題(3)

|朝鮮半島

今回は最終回、初回に予定していた「問題解決に向けて」とのタイトルを論じて締め括るわけだが、正直なところ筆が重い。所詮、借金を減らすのは単純な方法しかない。

「働いて返すから時間が欲しい」か、「全部は無理なので減らして欲しい」か、その両方を混ぜ合わせるだけであろう。いまさら判りきった事は説法無用だと思う。それにしても、朝鮮側は少なくもここ20年の間、散発的に個別ベースで債務免除の打診を試みた事もあったようだが、債務国全部に真摯なリスケ/減免の申し入れを行った事は無い。政策順位から本件は「しばらく放って置け」との態度に徹している様な気がするので、敢えて論ずるのも無駄だと言う気持ちなのである。

しかしながら、筆者が代表就任以来、機会を得て朝鮮側に打診した「常識的」解決の方策を再検討して見る事としよう。読者は{債務返済比率}を思い出して頂きたい。この比率を好ましい状態にするには:1)分子の債務額の縮小 2)分母の輸出額の拡大 3)其の両方のミックス を計らねばならない。

1)債務減免と返済期間長期化の方法

1993年にIMF加盟を研究するよう進言した。個別に債務減免や長期間リスケを交渉しても成果は期待出来ない。パリクラブの規制などもあり、一国だけが抜け駆け的に寛大な条件を呑む訳にはいかない。IMFには、朝鮮経済を打診して実施可能なリスケ/減免のプランを債権国各国に提示し、受け入れの調停をする役割と、朝鮮が債務返済の履行を果たすべく監督する役割を期待したいのである。このため、朝鮮は基礎的な経済データをIMFに提供すると言う苦痛を伴う事になる。当時これは国家機密漏洩罪になると言って難色を示した朝鮮側官僚もいた。その後、朝鮮側がIMFやアジア開発銀行に初歩的接触を試みた事は知られている。また経済データについても、食糧支援問題から国連に対し人口や食糧生産のデータを提供し始めた事も報道されている。朝鮮もいずれ貿易や金融で国際社会に乗り出す必要があろう。そのためにもIMF等とじっくり話し合う様、一層の努力を傾注して欲しいと考える。

2)輸出産業育成の方法

最近の開発経済論は殆どが極東/東南アジアの成功例に鑑みて「輸出志向工業化」政策の採用を奨励している。本政策を朝鮮が採用しても成功しないと言う否定的な要因は見当たらない。朝鮮も「経済開放」のメリットは認めている。羅先地区を指定したが、そこでは若干のインフラは準備するが後はすべて外国資本に任せると言う態度で10年経過した。現状、外国資本の参入も活発とは言い難い。どうして自力にても輸出産業育成に取り組まないのかと聞いた事がある。「我が国の産業は自国の資源を活用し自国の需要に見合う生産を行う事が第一の使命である。もし余剰生産物が出たら輸出する事は構わない」。従って外貨獲得目的のみの単純な輸出産業育成は国是に沿い難く、外国資本に任せる分野だと言うのである。この状況を変えるモーメントは今のところ次の3点が挙げられる。

  1. 躍進する中国経済の刺激
  2. 活発化しつつある先進国への研修員派遣
  3. 現代的経営感覚を有する在日朝鮮人(第三・四世代)との合弁事業や経済交流

3)結びとして

近い将来、日朝間の国交回復成立し、巷間言うところの賠償金/経済協力資金が支払われるにしても、朝鮮経済がたちどころに回復するわけではないし、日本以外の債権国が貿易信用を復活させるのも困難であろうと筆者は観測している。

「米百俵の精神」以上の「臥薪嘗胆」を歴史上何度も経験してきた辛抱強い民族である。広く国際社会と国民の様々なレベルで交流して朝鮮の理解を得るかたわら、国際社会との付き合い方の理解を増し、この未決済問題解決や経済再生のシナリオを自ら描いて欲しいと願っている。『ウリ式開放経済』の具体的政策内容も当然固まって来るはずである。