「豆満江開発計画」の更なる進展を期待する

|朝鮮半島

前回このコーナーで、シベリア横断鉄道(TSR)~朝鮮半島縦断鉄道(TKR)の連結問題に触れたが、その後の動きを追ってみようとインターネットを開いてみた。すると「豆満江開発計画(TRADP)会議が6月3日開催」との記事を偶然見つけた。そこで今回は、この記事を見て感じたことを記すことにする。

この記事は、5月31日付聯合通信によって配信されたものであるが、それによると南北朝鮮とロシア、中国、モンゴルなど5ヶ国次官を首席代表とするTRADP5ヶ国委員会第5回会議が6月3日ロシア・ウラジオストクで開催され、「豆満江流域開発の対象地域を朝鮮・清津、中国・延吉、ロシア・ナホトカを結ぶ大三角地域からモンゴル、韓国、日本を含む東北アジア一帯に拡大し、日本の委員会メンバーへの参加を誘導し、東北アジア経済協議体へと拡大・発展させるための方案が議論」されるという。またこの会議には、「韓国」からユン・ジンソク財政経済部次官、朝鮮からはキム・ヨンスル対外経済協力推進委員会委員長がそれぞれ主席代表として参加することも報じられた。

「豆満江開発計画」については一時に比べ関心度が下がったのか、最近はほとんどマスコミに報道されていなかったこともあり、この記事に大変関心をもったわけであるが、では前回の会議はいつ開催されたのかと思いながらERINAのホームページを開いてみた。すると前回の第4回会議は、1996年6月ウランバートルで開催されたことが確認できた。報じられた通り、今回の会議がもし第5回目だとすると、関係国政府間による次官級会議は実に6年間ぶりとなる。

そこでTRADP5ヶ国政府間会議が、なぜこの時期に再び開催されることになったのかを私なりに考えてみたわけだが、この1~2年の間、関係国政府を取り巻く政治的ワク組みが大きく変化し、「豆満江開発計画」についても従来とは違う新しい土台で論議し得る環境と条件が整い始めていることを反映したものではないかと-私なりの結論にたどり着いた。

南北朝鮮首脳会談と「南北共同声明」の発表による朝鮮半島での情勢変化や朝・中、朝・ロ首脳外交の展開による信頼関係の構築によって、中・ロ中央政府の中国東北地方、ロシア極東地域に対するスタンスも変ってきた。最近の朝・ロ関係の進展ぶりもその象徴の一つといえよう。私は最近ロシアの積極的姿勢を雰囲気的に感じていたが、これらが今回のTRADP5ヶ国委員会会議の開催にも少なからず作用したのではないかと。
実際の会議内容については、今後の報道などを通じて見極める必要があるが、もし報道内容が事実であれば、「豆満江開発計画」が再度浮上し、注目をあびる可能性もあり得るだろう。また朝・ロ関係が緊密化する中で、第4回会議ウランバートル会議を欠席した朝鮮の参加動向も注目される。同時に長い間宙に浮いた状態の日本のTRADP委員会への正式メンバー参加問題もこの会議でどの程度進展するかが見所だ。

ちょうど時期を同じくして日・「韓」共同開催によるワールドカップがはじまり、日・「韓」の友好ムードが「最高潮」に達している。小泉首相は、先の訪「韓」時における共同記者会見で「手が合わさってこそ音がでる」という朝鮮のことわざを引用して両国間の関係緊密化をアピールした。しかし、これとは裏腹に「豆満江開発計画」に関しては、日本は依然として「慎重論」、「入口論」から脱せずにいる。私はいろいろな難題があるとしても、まず「出口論」から出発して互いを尊重しあい、理解と信頼を高めながら一歩一歩前進する過程で、交流と協力を実現していくのが問題解決の早道ではないかと長年感じてきた。まさしく小泉首相が引用したことわざにそってである。その意味では、北東アジア地域の一員である日本も、情勢変化を肯定的に受け入れながら、そろそろスタンスを変え、長年の懸案を自ら解決し、政府レベルで積極的に関わっていく時期を迎えているのではないかと思っている。いずれにせよ、「豆満江開発計画」の更なる進展を期待したい。

最後に若干話がそれるが、朝・ロ関係をめぐる最新の動きを紹介する。

さる5月21~23日にぺク・ナムスン(白南淳)外相がロシアを訪問した。モスクワでのイワノフ外相との会談では▲南?北と北?米関係改善問題▲原子力発電所建設支援▲TKR~TSR連結▲港湾などのインフラ拡充などが重点的に論議された模様で、2002-2004年度両国外務省間の交流計画が調印された。ぺク外相は、帰路ウラジオストクに立ち寄り、S・ダルキン沿海地方知事とも会談した。

またぺク外相の訪ロに先立って4月4~12日には、チョ・チァンドク内閣副総理を団長とする経済交流ミッションが沿海州とアムール、ハバロスクなどロシア極東地域を訪れている。ロシア側とは▲建設、林業、農業分野での協力拡大▲朝-ロ貿易拡大▲羅津港を経由するロシア中継貨物の活性化▲勝利石油化学工場での石油精製協力▲羅津港などインフラの拡充▲石炭鉱山の近代化支援▲ウラジオ~ハサン~羅津間の光ケーブル建設計画などが協議された模様で、これらは朝鮮国際貿易促進委員会と沿海地方政府が出資してつくられたロシア極東投資会社が窓口となるようだ。そのためロシア側代表事務所が今年下半期に平壤に設置されるという。

以上でもわかる通り、朝・ロ間で協議された案件の多くが、ロシア極東地域を中心に押し進められつつあることを読み取ることができる。今後これらの動きが、地域的に密接な連関性を持つ「豆満江開発計画」や「北東アジア経済協力」の推進にも好影響を及ぼすことを祈っている。

(了)