農産品セーフガードを正式発動すべきではない

|中国

この文章がHPに掲げられる頃には問題が決着しているかもしれず、「六日の菖蒲、十日の菊」の類かもしれないが、農産品緊急輸入制限(セーフガード)の正式発動に反対する理由をここに四点記しておきたい。

第一に、本国内の農産品の競争力向上が望めず、緊急輸入制限しても無意味である可能性が高い。セーフガード制度の趣旨は、輸入制限をする間に当該国内産業の改革を進め、その生産効率と製品の品質向上を図って競争力を回復するところにある。ところが、緊急輸入制限の暫定措置の対象となった農産品について、それが実現する可能性は低いと言わざるを得ない。残念ながら、報道を瞥見する限り、産地における改革への取り組みは遅く、受身であるという印象を受ける。

ここには、そもそも日本の農業が産業として国際競争に勝ち残れるのかという大問題が伏在している。素人考えだが、多くの地方においては、環境・生態系保護のための農業、あるいは文化としての農業への発想の転換が必要とされているのではないだろうか。

第二に、相手国の報復措置のため、日本全体としては利益より損失の方が大きい。中国が課した報復関税による被害は甚大である。例えば、日本自動車工業会が自民党の自動車産業小委員会に報告したところによると、中国向け自動車輸出が事実上停止したため、自動車業界は2001年後半だけで512億円に達する損害を被った。

第三に、中国がWTOに加盟し、その市場をめぐって欧米との競争が激化することが必至の状況下で、日本企業を不利なポジションに立たせる措置を採るべきではない。先に挙げた日本自動車工業会の予測では、その損害額は2001年後半の512億円から2002年に約4800億円、2003年には約6400億円に達する見込みである。この被害額の拡大は、中国がWTOに加盟することによる輸入車市場の急増に対応できないことによる。何も自動車業界に限らず、中国のWTO加盟は多くの日本企業にとって発展の重要なチャンスであり、スタートで出遅れることの不利益は非常に大きい。

第四に、中国国内では、主には経済的な考慮から日本との関係を良好に保とうとする考え方が主流だが、それに反対する者に反撃材料を与えるべきではない。今の中国では、グローバル化の時流に乗り遅れることなく、米日と協調し、市場経済化を推進しようとする立場が政策決定の主導権を握っている。だがそれに対し、市場経済化の負の側面を強調し、社会主義制度の合理的な部分を活用すべきだとする新左派の主張が現われている。また、日本への対応に関しては、強硬な姿勢を示すべきだとする勢力は常に存在する。自由貿易と相互依存のメリットを否定するようなセーフガードの発動により、そうした勢力に主流派への攻撃材料を与えるべきではないだろう。