域内資金循環システムを構築せよ

|中国

北東アジア諸国の外貨準備高がおおよそ9,800億ドルに達し、世界の半分を占めるようになった。筆者の試算によると、2001年11月まで、全世界の外貨準備高は約1兆9,500億ドル、その50.26%を北東アジア諸国が占めている。その中で、世界第一位の日本が4,038億ドル、第二位の中国(大陸)が2,122億ドル(12月末)だが、それに香港(1,122億ドル)、台湾(約1,150億ドル)を合わせると、スリー・チャイナで約4,400億ドル、日本を上回り世界のナンバーワン。それに韓国の約1,000億ドル、ロシアの366億ドルを足すと、ちょうど世界の半分を占めることになる。(さらに、ASEANの外貨準備も足すと、世界の6割を超える)

ロシア全体を北東アジア地域に入れるのはいささか問題になるとして除くとしても、経済圏で分けるなら、香港と台湾を北東アジア地域として見ても大きな問題にならないだろう。だとすると、この地域諸国は豊かな外貨資産をもった国際金融市場におけるプレーヤーとしての影響力を高めることは間違いなく、現実的にもそのような動きは顕れている。例えば、中国通貨当局が外貨預金におけるEUROと日本円の比率をそれぞれ15%としていたが、今年からEURO通貨が発行・流通されることに伴い、EUROの比率を20%に上げる方針を決めた。これは日本円とドルの国際的地位に直接影響を与えるだろう。

上記の数字はそれぞれの国の公式な統計によるものであるが、統計に反映されてない金融・外貨資産も莫大な規模。中国(大陸)は国内に1兆ドルを超える外貨資産をもっているという試算がある。国内に健全な金融システムが欠如しているため、外貨資産の一部は、香港やアメリカなど国際金融市場に逃げ出て、「外資」として再び中国市場に戻ってくるケースも少なくないという。北東アジアは高い外貨準備と高い貯蓄率で潤沢な資金をもっていながらも、共通通貨圏を持たず、金融市場も未発達のため、域内の外貨資産が米国市場に流れ、米国の国債を買ったりして米国経済を支えている。また、その資金の一部が多国籍企業の手によって東アジアに投資され、高いリターンを獲得し、一旦金融不安定になると再び海外に逃げてしまう、という悪循環構造になっている。

北東アジア地域は中国の浮上によって世界経済における地位が向上しているが、同時に国家間の格差が大きく、バランスがとれていない。この地域の開発ニーズと資金需要は大きく、約15億の人口のなかで3分の2の人口は発展途上にあり、発展のポテンシャルが大きい。本格的な開発はこれからだ。しかし、資金を必要とするところにお金が回らないのが現状であり、それを打開するためには、如何にして域内の潤沢な資金もって地域開発を進めるかという域内資金循環システムを考えなければならない。共通通貨圏を構築するという構想は将来の夢として描けば良いが、現実的には、金融安定のためのメカニズム構築を検討するのが焦眉の課題ではないか。まず、通貨・為替安定措置が不可欠であろう。日本が提唱した「AMF構想」が米国とIMFの反対により頓挫したが、すぐに諦めてはならない。新宮沢構想が考案され、通貨スワップ協定で合意したチェンマイ合意は、東アジア協力の試みとしては前進した。今後も各国政府間の政策対話を強化し、ASEAN+日中韓の多国間協力枠組みのもとで新しい「アジア通貨基金」の創設を推進すべきである。

次に、地域開発のための多国間開発金融機関を創設する必要がある。北東アジア開発銀行(NEADB)構想は10年前から提案されたが、その実現まではまだ時間を要するだろう。しかし、近年は韓国、中国、日本などでこの構想が政策課題として議論され始めている。その実現を巡る関係諸国の中央政府、地方政府、民間の動きもにわかに活発化している。

いまひとつは、「北東アジア貿易・投資銀行」の設立についても議論をはじめることを提案したい。域内資金循環システムの一環として、この地域には潤沢な資金を活用し、発展途上国の開発のみではなく、地域内の国境を跨る共同開発や途上国の市場経済化の支援、貿易・投資促進のための金融機関として活用できる。ADB(アジア開発銀行)は地域開発に重要な役割を果たしてきていることは確かだが、世界の60%の人口を抱えているアジア地域の開発を全うするには限界がある。ラテンアメリカ地域には5つの多国間地域開発金融機関があり、アフリカ・アラブ地域にも12の多国間地域開発金融機関がある。そのほかにもAMF(アラブ通貨基金)が1976年にアラブ連盟22カ国により創設されている(日本のAMF構想は著作権違反であり名前を変更すべきである)。それに比べてみると、東アジア地域の金融インフラが如何に遅れているかが分かる。ADBのみでアジアの開発を全うするという主張は説得力を欠いている。

北東アジア地域協力の一環として、以上に取り上げた幾つかの多国間金融機関を創設することは、同地域の金融インフラを整備・強化する上で不可欠な課題である。金融インフラが整備されれば、域内資金循環メカニズムも形成され、経済のダイナミズムがそこから生まれるだろう。