地域協力の舞台に躍り出す中国

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2002年1月まで、世界には約200以上の二国間、または多国間の地域貿易協定(RTA)がGATT/WTOに通報されたが、発効しているのは160。その内の128件は1990年以降に、24件は2000年代以降に締結されたもの(外務省資料による)。世界経済のグローバル化のなかで、リージョナリズム潮流も勢いを増していることの現れであろう。

ここで注目すべきことは、世界GDPランキング上位30カ国のうち、上記の200の地域協力協定とは全く無縁なのは、皮肉にも我々が住んでいる北東アジア三つの経済大国(日本、中国、韓国)のみ。日本は今まで対米依存の経済政策を固持していたため、米国抜きの地域協力には消極的であり(ただし、今年1月にシンガポールと「新時代経済連携協定」を締結)、韓国は「北方政策」を展開することにより朝鮮半島を中心とした北東アジア地域協力を重視してきたが、地域協定はまだ締結されていない。一方、中国は「全方位対外開放」政策を実施し、グローバル化への対応政策に力を傾けてきた。北東アジアが船に乗り遅れていることは間違いない。

ところが、アジア通貨危機を契機に3カ国の地域協力に関する姿勢は変化しつつあり、明るい兆しが少し見えてきた。1997年12月に行ったASEAN首脳会議(クアラルンプール)に日中韓3カ国が参加したのがその始まりであり、1999年の同会議(マニラ)では日・中・韓3カ国首脳の会合(昼食会)を設け、史上初めて3カ国首脳が顔を合わせた。その後、この3カ国首脳会合が定例化され、そこでの提案を受けて、さらに3カ国の大臣レベル(経済・財務大臣、環境大臣、外務大臣、特許庁長官、港湾局長など)政策対話へと急速に拡大した。また、研究機関間の共同研究や共同セミナー、民間レベルのフォーラムが続々と開催され、3カ国の急速接近ぶりが目立っている。地域協力の時代的潮流に3国とも乗り遅れまいという姿勢がはっきりと表れている。

その中で、もっとも注目されるのは近年の中国政府の地域協力に対する姿勢と政策の変化である。まず、日中韓+ASEAN首脳会議、及び日中韓3国首脳会合に積極的対応を見せ、二国間通貨スワップ協定を積極的に進めている。同時に、昨年10月の上海におけるAPEC開催の成功に続いて、今年5月に上海で開催されたアジア開発銀行(ADB)第35回年次総会でも江沢民主席が活躍ぶりを見せ、多国間地域協力機構の活動に対する中国の積極的な姿勢を示した。この二つの会議は中国側の自信を高揚させる絶好の機会となり、地域協力における中国の役割をアピールする機会でもあった。以上は既存の国際協力枠組みへの取り組みである。

同時に、中国は周辺諸国との新しい協力枠組みの構築にも積極的に動いている。2001年に中国とロシア・中央アジア諸国との間で創設された「上海協力機構」で中国はイニシアティブを発揮しており、今年6月4日にカザフスタンのアルマトイで開催された「アジア相互協力と信頼措置会議」にも江沢民主席が出席し、中国の地域協力に対する姿勢と存在感をアピールしている。最も注目されるのは、今年4月12~13日に中国海南島ボアウで開催された「アジアフォーラム」第1回会議である。日本の小泉首相も同会議に出席し、講演でアジア地域協力についての日本の立場を表明した。同会議で、朱鎔基中国総理は地域協力に対する四つの方針を明らかにした。それは、①経済協力を中心に全方位協力へと拡大すること、②サブ・リージョナル協力をまず進め、その後アジア全地域の協力を進めること、③二国間協力と多国間協力は相互補完関係にあること、④開放された地域協力を実施すること、など。

今まで地域協力に対して日本と同じように曖昧な態度をとってきた中国が、上記のように方針を固めることによって、今後は地域協力へのテンポを着実に速めることが予想される。地域協力において、中国当局は自らリーダーシップを取ることには今なお否定的な態度を示し続けてはいるが、前述したとおり、地域協力における主導権を握ろうとする意図はだんだん強まっているのではなかろうか。