ビジネスパートナーとしての極東ロシア

|ロシア

※以下は、あくまで前田個人の意見であり、日本センター事業を行っている日本政府の見解ではないことをお断りしておく

変化するロシア情勢を、マクロ的な観点だけでなく、極東の地にあって、現地に密着して、現地の企業の動向なども踏まえ、日露経済関係の問題点、課題等を探ってみたい。

1. まず、ロシア極東との経済関係拡大を計るためには、ロシアの中で極東の置かれた立場現状、即ち、中央政府に依存する体質から抜けきっていない、中央政府の支援不足という現状を正しく理解して、彼らの立場に立って、日露協力の方向を探るべきである。

2. 極東、(含、東シベリア)は、地域により、政治的・経済的状況が大きく異なる故、極東とひとくくりにするのではなく、各地域の特性、日本との関係を正しく理解し、各地域が日本に何を求めているかを知る努力が必要と思われる。それぞれの地域が、歴史的に日本との経済関係を持っているため、今後、可能な範囲でそれぞれの地域の問題点を探ってみたい。

ハバロフスク、沿海州の貿易額、投資額を捕らえてみると下記の如くである。

ハバロフスク州 沿海州
2000年貿易量:
1位 中国 554百万ドル 1位 中国 377百万ドル
2位 日本 245百万ドル 2位 米国 296百万ドル
3位 シンガポール 237百万ドル 3位 韓国 278百万ドル
4位 韓国 75百万ドル 4位 日本 227百万ドル
2000年外国からの投資:
1位 オーストリア 8.5百万ドル 1位 韓国 42.4百万ドル
2位 シンガポール 5.5百万ドル 2位 米国 11.8百万ドル
3位 米国 5.4百万ドル 3位 日本 11.8百万ドル
4位 英国 3.2百万ドル 4位 中国 1.3百万ドル
5位 日本 3.1百万ドル

(以上、ハバロフスク州政府、priamurskie vedomosti紙及び、日本企業より聴取)

外国からの投資額合計は、沿海州の75.5百万ドルに対し、ハバロフスク州は、27.2百万ドルにとどまっている。

3. ロシアの変化を理解する必要あり

ロシアの経済は、

①90年代初頭の解放と混乱の時代
②98年8月のルーブル危機

を経て、現在に至っており、それぞれの時代で大きく変化している。

極東でも、非常に多くの日本企業が①の時代にロシアに進出し、合弁企業を作り、トラブルに巻き込まれたりして撤退しているケースが多い。ロシア側の混乱の時代であったこと、法律が未整備であったこと等、ロシア側の理由によるところが大きいが、成功している合弁企業もあり、何が問題であったか冷静に分析してみる必要がある。

  • この1-2年間、ロシア政局の安定、経済の復活等もあり、極東の状況も、1992年頃と比較して大きく変わってきており、落ち着きを取り戻している。特に、軽工業、食品工業分野で、国内産業が発達し、輸入品を駆逐している物も出てきている。
  • 2001年に入り、法律面でもかなりの改善が見られる(ロシアの問題として、法律ができても実施面で問題があり、地域によって解釈・実施要領が異なり、裁判所の解釈も異なる。この点、今後の実施状況を見守る必要があるが)。

当地を訪問される多くの日本企業の人達の殆どが、①の時代の理解しかされていない。これが、日露間の相互理解不足の原因ともなっている。この点、ロシアの現状の正しい認識を、できるだけ広く日本の企業に持ってもらうべく努力する必要がある。

  • 極東における、米国、韓国、中国等の動きに注目する必要あり。

外国貿易銀行ハバロフスク支店は拡大する中露国境貿易に対応するために、中国銀行支店との間で国境貿易決済のための直接口座を相互開設。米国は、最小1,000ドルという小額の融資にも応じている由。韓国、中国が極東ロシアで繊維製品〈縫製〉を製造し、対米輸出している。・・・これは、ロシアには対米国繊維輸出の制限がないため、韓国、中国の企業がこれに目をつけたもの。

4.協力の方向

(1)論の時代から、各論の実行の段階:

  • 小さなプロジェクト、ビジネスでも良いから、実現できるよう支援法方を検討するべきである。この点、外国貿易銀行(VTB)ハバロフスクの支店は、独自のリスクで極東の優良企業に対する融資、プロジェクトの発掘に努力しており、これを日本側としても積極的に支援し、極東における、優良中小ビジネス発掘の拠点とすることも検討するに値する。
  • ツウステップロ-ン:VTB、SBERBANK等と協力して、具体的案件ごとに取り進める段階
  • 通常貿易拡大のための施策:ロシアからの買いを増やすための前渡金保険等の対策を検討・・・欧米のトレーダーに対抗して、ロシアからの輸入を大幅に増やすことが可能。通常取引の延長上で、相互信頼関係を確立し、新たな投資を検討してゆくべきである。
  • 中小企業同士の経済交流活性化支援:ロシアの法制が改善されつつあるとはいえ、各地方の税務署、税関により法解釈が異なり、現地に進出している日本の合弁企業にとっては、まだまだ厳しい環境であり、大変苦労している。現地に拠点を持つ一部の大手企業を除いて、日本の企業は、ロシア現地での活動拠点がなく、案件があっても相談相手がなく、情報不足のため、具体的なビジネスに結びつけるのに非常に苦労している。これらを、財政的な支援だけでなく、的確な現地事情の提供、法律的なアドバイス、及び現地企業との仲介等の支援ができるようになれば中小ビジネス拡大の可能性が広がる。
  • ロシアの企業家は、理論的には非常によく勉強しているが、一部の企業を除いて、貿易実務経験に乏しく、具体的にどのようにして日本とのビジネス関係を確立するべきかについての的確なアドバイス、日本企業との仲介を非常に強く求めており、これらに答えてやる必要がある。

(2)物流:地理的に、極東ロシアの最も重要な産業の一つであり、日本として総合物流センター、TSL復興支援、港湾改修等協力できる分野が多い。韓国、中国との協力も検討してゆくべきである。

(3)資源開発型プロジェクト:極東ロシアは、今後も日本にとっての原料供給基地としての意義は大きい。

(4)観光:ロシア各地域に於いて、非常に興味を持っている案件であり、日本側の協力できる分野は広い。カムチャッカ、沿海州、ハバロフスク、イルクーツク等が個々に観光開発を計っているが、これらを総合的に組み合わせる方向で、日本側が協力できないか。また、今、人気が出てきている、モンゴルや韓国、中国との組み合わせも検討するべきと思われる。この為に、専門のプロモーターを長期間現地に派遣することも検討してはどうか。

(5)人材育成:今後も、日露経済協力の重要な分野であり、日本政府関係機関、都道府県がそれぞれ独自に行っている協力を分野によって統一して、効率化を図ることも検討してはどうか。また、現在極東では、林業、道路建設、鉱山開発における機械作業員が大幅に不足しており、その養成が急務となっている。これまでの、経済分野での経営者養成と平行して、これら現場作業員の養成の分野での協力も検討してはどうか。

(6)極東各州の協調体制を促進させる:連邦政府だけを頼りにせず、極東諸州が協力して日本からの公的クレジット提供の為の条件作りをさせるべきである。

(7)連邦政府の支援が不可欠なエネルギー開発、発電所改修、上下水道、通信設備、ガスパイプライン等のインフラ整備に係わるプロジェクトを発掘し、連邦政府の支援を引き出すべく地方行政府を支援。・・・これは、時間がかかっても、日本の対ロシア支援プロジェクトとして継続して実現を目指すべきである。

5.日本センターの役割

日本センターは、1994年以降に、ロシアの市場経済化支援を目的に順次、設立され、極東ではハバロフスクのほかにもウラジオストク、サハリンに開設されている。日本センターでは、各種経済セミナーを通じた人材の育成や、日本語の教育にあたってきたが、この努力は、現地では、高く評価されており、ロシア側の期待も大きく、今後、変化するロシアのニーズをとらえて、日露経済協力に必要な人材育成を計ってゆくことを期待されている。

以上、紙面に限りがあり、今回はここ迄とし、足らない点は、次回以降の課題として、現地に於いて更に研究してゆきたく、各位からのご指摘、ご批判をお願いする次第である。