ヤクート・サハ、イルクーツク、ブリヤートの地域別の状況と問題点

|ロシア

以下は、あくまで前田個人の意見であり、日本センター事業を行っている日本政府の見解ではない事をお断りしておく。

8月の弊論文に引き続き、今回は、ヤクート・サハ、イルクーツク、ブリヤート等の地域別の状況と問題点に触れてみたい。

1.ヤクート・サハ共和国

極東最大の面積をもち、人口120万人で、ヤクート人等の原住民は約30%、残りはロシア、ウクライナ他からの移住者。1600年代に、原住民と、ロシア皇帝の命を受けてシベリアに進出してきたドンコサックとの間で60年以上にもわたる戦の歴史がある。外からきた人は出稼ぎ意識が強く、一定期間働いて極地手当てをもらって出て行くというケースが多く、定住率が低いとの事。18世紀半ばに日本からの漂流民10人がヤクーツクにつれてこられ、そのうち5人が当地に残り日本語学校を作った。残り5人がサンクトぺテルブルグに連れて行かれた。極東で最初に日本語学校が作られたのが当地であり、日本との関係は古い。

経済関係

この共和国は、極東の中で日本との経済関係が最も古く、25年前に締結された日露間の基本契約に基づく南ヤクート炭開発プロジェクトに基づき、現在も年間300万トン以上の石炭(原料炭、一般炭)が日本向けに輸出されており、それに関連した資機材の日本からの輸出も継続している。

2001年度1-6月の同共和国の対外貿易高合計1,090百万ドルの内、対日が235百万ドルとダントツで、2位米国の121百万ドルの2倍近くある。サハ・ヤクート統計委員会から聴取)

今後、南ヤクートネリュングリ炭田に続くプロジェクトとして、エリガ炭田開発プロジェクトがあり、ロシア側で独自にシベリア幹線鉄道からの支線の建設に着手している。このプロジェクトは、日本だけでなく、ロシア極東、中国、韓国などに硫黄分の低い良質の強粘結炭、及び燃料用一般炭を供給することが出来、北東アジアにおけるエネルギーバランス、及び、環境改善という観点からも重要な意味を持つ。

長期的には、北東アジア地域のガス化という方向性は考えられるが、これには相当の時間がかかる。現在、環境上問題の多い劣悪炭を大量に使用している極東ロシア、及び中国の発電所の燃料をこの炭に置き換える事により、北東アジアにおける環境改善に大きな貢献が出来る。また、物流の拡大という観点からも、極東ロシアの経済に大きな意義をもつプロジェクトであり、日本の積極的参加を強く期待されている。日本としてもポストネリュングリとして取り上げることは、鉄鋼原料及びエネルギー資源確保の観点から大きな意義を持つものと思われる。

ガスパイプライン

日露極東優先プロジェクトのひとつとして、日本外務省の支援を受けて、スレドネビリュイ-ヤクーツク間のガスパイプライン建設プロジェクトの共同F/Sを実施中である。共和国側が非常に期待しているプロジェクトのひとつである。

そのほか、共和国としてはダイヤ(研磨済み)の輸出についても注力している。(これまでシンジケート経由の原石の輸出しか認められなかったが、研磨済みダイヤの輸出について一部共和国側に権利が認められた)

人材育成

共和国として最も力を入れている分野であり、ハバロフスク日本センターとしても、緊密に協力している。

同共和国にとっての最大の経済関係を持つパートナーとして日本に対する期待が大きい。

2. イルクーツク州

人口約270万人。同州と日本との関係も古く、18世紀にヤクーツク、サンクトぺテルブルグに次いで、当地で日本語学校が作られ、ヤクーツクの日本語学校を吸収し、以来シベリア、極東で唯一の日本語学校として長く日露間の交流の支えとなった。

同州との経済交流

豊富で安価な電力により、アルミ精錬、石油化学工業、航空機製造等が発達しており、更に、豊富な木材資源に恵まれ、木材加工、紙パルプ工業も発達している。過去6年間、イルクーツクの対外貿易の中で日本がトップの座を占めており、2000年の同州からの輸出額3,230百万ドルのうち、98.3%が日本向け輸出であり、日本向け輸出のうち、75.4%がアルミ再生塊、19.2%が木材、木材加工製品である。日本からの輸入は、2000年度輸入全体の1.7%を占め、産業プラント、医療プラント、化学品、家電等である。これらのかなりの部分がモスクワ、ヨーロッパ経由調達されている。(イルクーツク州政府より聴取)

これまで、モスクワ、サンクトペテルブルグの一部の窓口だけに特典が与えられていたために、極東の港経由よりモスクワ、サンクト経由の方が調達コストが安いという不合理な状況であったが、これらの特定の窓口が廃止された故、今後極東経由の資機材の調達が増えることが期待される。これが実現されてはじめて、極東地域と日本との協力関係が発展するものと思われる。

投資

1992-2000年の間、日本からの投資により9社の合弁企業、総額13.76百万ドルが現地に登記された。
内、3社:木材、木材加工
3社:小売り、卸売り
1社:コンサインメント、輸送
1社:修理、サービス
1社:消費物資

イルクーツクの地理的な状況から、極東の港までの3,000kmの輸送コストを吸収できる高付加価値製品が今後日露間の貿易取引の大宗となろう。その意味から、安い電力を武器としたアルミ、石油化学製品、付加価値を高めた木材製品等が今後も対日輸出の主流を占めることになろう。同州の重要な観光資源として、バイカル湖があり、ブリヤート共和国、ハバロフスク、沿海州、ウランバートル等との協力による観光ルートの開発、飛行機便の開設により、日本からの観光客の誘致に努めるべきと思われる。(現在の不安定な航空便では、観光客を増やすことは無理)これらの地域で共同で、日本から観光プロモーターを招致して、積極的に観光客の誘致を検討してはどうか。また、イルクーツク国立大学等の教育機関と、日本の教育機関、経済界の連携による人材育成、ハイテク分野での協力の可能性を検討してはどうかと思われる。

今回再選されたイルクーツク州知事は、日本との交流に非常に力を入れており、2002年に大型訪日経済代表団の派遣を計画している。東シベリアにおける日本の重要なパートナーとして、経済を中心として、いろいろな分野での交流拡大を目指してゆくべきである。

3.ブリヤート共和国

人口約100万人。隣接するイルクーツク州に比べて、電力料金は大幅に高く、経済格差が大きい。主な産業は、林業、非鉄、石炭。1990年代の初めのソ連崩壊による混乱の時代に、米国やヨーロッパ諸国が米国流の資本主義、市場経済を持ち込もうとしたが、その当時、ロシアの銀行金利は250%を越えており、6%前後の金利を前提とした米国式のやりかたでは結局うまく行かなかった由。彼らは、銀行から簡単に金を借り入れる事が可能と考えていたが、ロシアの現状が理解できていなかった。

その後、1998年の経済危機を経て今日に至っているが、消費物資の面では、イタリア、ドイツ、フィンランド等のヨーロッパ製品が相当出回っている。ただ、これもウランウデ市内だけで、地方との格差が大きい。

日本との貿易高は、2000年度8.45百万ドルで同共和国全体の6.3%。そのうち、8百万ドルがツグヌイ炭の輸出である。ツグヌイ炭は、採炭条件、炭質の面から、電力用炭に理想的な石炭であり、他の石炭と比べても競争力があり、今後の日本向、韓国向に輸出拡大が期待される。〔窒素含有量の低い石炭として、NOX対策上日本の電力にとり非常に貴重な資源である〕

ブリヤート側のバイカル湖はまだあまり手付かずのすばらしい自然が多く残っており、イルクーツクと共同で観光開発による観光客の誘致を進めるべきであり、この分野で日本が協力できる分野が多い。

また、同共和国政府としては若手の人材育成に非常に力を入れており、日本との協力を非常に期待している。この面で、日本センターとしても協力している。

ヤクート・サハ共和国、イルクーツク州、ブリヤート共和国には、非常に多くの民族がおり、ロシア人以外に、東洋系の日本人と同じ顔をした民族がいるが、それぞれロシア語しか話さない人と、ヤクート語、モンゴル語、中国語、朝鮮語等を話す民族が同居している。

これらの民族を抱える共和国は、中央政府との関係もそれそれ複雑な問題を抱えている。一様に、日本に対する期待が大きい。

日本として、これらの地域のそれぞれの事情を理解し、経済、文化を通じ緊密な関係を築いていくことが、日本のパートナーとしての東シベリア、極東ロシアとの協力拡大につながるものと信ずる。

以上