極東ロシアでの日露経済協力のあり方

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以下は、あくまで前田個人の意見であり、日本センター事業を行っている日本政府の見解ではない事をお断りしておく。

これまで幣論文にて述べてきた内容と合わせ、今後の極東における日露経済協力のあり方についてまとめてみたい。

1.日露企業間交流を活性化する為に、必要な相互の情報を適時に正しく伝えられるシステムの構築が必要

  • JETRO、各自治体、その他の団体が保有する日本の企業情報を統一し、ロシア企業からアクセスしやすくする。
  • ロシア企業情報をロシア側、自治体、その他の団体と協力して整理し、HPにてアクセスできるようにする。
  • 地域ごとの企業グループを形成し、情報交換を行う。

2.銀行を中心としたファイナンススキームの整備

モスクワ資本の極東進出、中国資本の進出とともに、特に中小企業の育成は地域の行政府の方針でもあり、日本の銀行と地元の銀行の協力により、中小企業向けファイナンススキームの充実が望まれる。

この分野では、外国貿易銀行ハバロフスク支店が東京三菱銀行との1,000万ドルのクレジットラインを設定し、これに基づき2002年1月29-31日、ハバロフスクにおいて日露企業懇談会を開催し、ロシア及び日本の企業に対して新しいファイナンススキームの説明を行った。これまでの会議と異なり、民間企業が中心となってこのような会議を開催したことは画期的な出来事であり、このような動きを更に活性化するよう支援してゆく必要がある。

この会議をきっかけとして、各種のビジネスについての交渉が企業間で継続されていること、及び、企業によって新しいファイナンススキームでのビジネスの可能性を探る動きが出てきたことは大きな成果といえる。

3月6日、国際協力銀行と民間3行(東京三菱、みちのく、北洋)と外国貿易銀行の間で締結された80億円(内、極東向け10億円)のTWOSTEP LOAN、及びNEXIの貿易保険が組み合わされて、低利の円資金による新たなファイナンススキームの可能性がでてきており、これらを出来るだけ多くの企業が積極的に活用出来るよう、広く日露企業にアピールするべきだと思われる。

3.中小企業と大手企業(商社)の役割

現在のロシアは、エネルギー、資源を基盤とした巨大企業と、中小企業に分かれ、極東ではかなりの有力中小企業が育ってきているとはいえ、全ロシアの5%であり、まだまだ弱い存在である。

今後の日露経済協力の方向は、中小企業同士の交流拡大であり、特にロシアの中小企業を日本のパートナーとして育成してゆくことが最重要課題であるが、現段階では、日露の中小企業同士だけではあまりにも情報力が乏しく、相互信頼を確立するまで相当の努力と忍耐が必要である。

一方、商社を中心とする日本の大手企業は、長年にわたるソ連、ロシアとの経験から世界に誇る情報網をもっており、これらの経験と情報力を、日露中小企業間の交流拡大に何とか生かす方法を探るべきである。

大手企業にとっては間尺に合わないビジネスが多く、やりにくい点もあるが、ロシアが大きく変わってきている現在、これまでの大企業の発想で大型プロジェクトだけを追いかけるのではなく、今後はこれら中小ビジネスを拾い集め、中小企業との協力で実現してゆく努力も必要ではないだろうか。

4.地域産業の育成に協力

極東の各地域により異なる特性を理解して、今後は、単に売るだけ、与えるだけという協力でなく、その地域に必要とされる産業で、且つ日本にとって必要なパートナーとして育てることを目標とするべきである。

地域により異なるが、ハバロフスクを例にとると、この地域ではサハリン大陸棚プロジェクト関連のテンダーへの地元企業の参画、ガスパイプライン建設と並んで、木材の加工度を高めることが至上命題となっている。人材育成も含めこの分野で協力することにより、日本の木材加工文化を極東の木材企業に移植し、日本の中古製材機械、専門家を活用することも出来、双方にとって極めて合理的な協力の方向である。

これらの協力により、木材の中間製品を日本に輸入し、最終製品とすることが出来、極東ロシアとの長期的な相互補完協力関係が望める(今、日本がこれをしないと、フィンランド、中国、韓国等が乗り出してきて、日本のプレゼンスがなくなる恐れがある)。

極東では、サハリン以外でも、サハ・ヤクーツク、イルクーツク、ブリヤート、沿海州等はそれぞれに日本との経済関係が深く、日本に対する期待が大きい地域であり、それぞれの地域で経済性の原則に立ち、日露双方で競争力のあるビジネス発掘に努めるべきである。

5.極東に対するロシア中央政府の支援がまだ不足していること

特に、モスクワとサンクトペテルブルグの特定の業者が依然として特恵的な関税率を享受し、資本力を生かして大量に輸入し、経費を抑えている。これらの不公平が存在する限り、家電、P/C等の分野では、日本から極東への直接販売は難しい。これに対抗するためには、モスクワ、サンクトペテルブルグに匹敵する特恵的な窓口(経済特区的なもの)を極東に作らせるべく極東の行政府と協力して中央政府に働きかけること、及び、極東経由でしか輸送が不可能なもの、即ち、木材加工、水産加工、食品加工、エネルギー開発等の分野において、日本の競争力を生かした協力関係を確立することが必須と考えられる。

上記の極東の特殊事情、及びロシア経済が安定してきていること、極東における中国の経済的進出が非常に早いこと等を考慮し、今や日本の大手、中小企業が協力し、日本政府、地方自治体の支援も得て、単なる支援ということでなく純粋に経済原則に則り、極東ロシアの企業を日本の戦略的経済パートナーとして育ててゆくこと、この点に集中して注力するべき時である。

以上