「サイショの第一歩、対ロシアビジネス事始め」

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「クリケット大会」

5月11日(金)、サハリンの石油・ガス大型開発事業に携わる欧米企業幹部で構成される「サハリンクリケットクラブ」を招き、在北海道外国人を中心とした「北海道クリケットクラブ」との国際親善試合が実施された。日本でも滅多にないクリケットの国際試合とあって、東京から審判団が派遣されるなどの盛り上がりを見せた。この試合を主催したのはサイモン・ジャクソン氏(オーストラリア人)。北海道国際ビジネス協会(略称HIBA)の会長であるとともに、自ら貿易会社の代表を務めている。もともとは豪州等から海産物を輸入し、日本の中古車をオセアニア地区に輸出していたのだが、1999年にサハリンで「ホームページ使った貿易」の講師として現地訪問して以来、サハリンに駐在する欧米人とネットワークを強化し個人企業に近い彼が世界屈指のエクソン、シェルなどのメジャーとの取引も始めている。その影には現地のハローウィンパーティーへの参加や関係者が訪日する時の献身的なサポートなどがある。今回のクリケット大会も娯楽の殆どないサハリン州での滞在に退屈した資源プロジェクト関係者のニーズを汲み取り孤軍奮闘して実施にこぎつけた。クリケットの経験者も道内には殆どいない中、にわかチームを仕立ててまで実施したその行動力には敬服する次第である。そのフットワークの良さからサハリン在住外国人の北海道の窓口になるともに、現在もサハリンに自社支店やインド料理の店を作るなど幅広く活躍している。

実施にあたって私も個人として協力できる部分はサポートしたが、メジャーによる地元港の視察を条件にクリケット会場提供整備を行った石狩市は、その港湾の様子を現地英字新聞のトップで紹介され、非常に効果的なPRを可能とした。サイモン氏の功績は北海道企業にも好影響を与えている。

「聾唖者交流がきっかけ」

株式会社「せきはら」は東京の大手塗装会社から独立して北海道で塗装業を営む中小企業である。大手塗装会社時代に得た湾岸地域での石油タンク塗装作業の知識から、サハリンプロジェクトが進展した際の塗装や関連業務のニーズを想定し、地道なPR活動を続けてきた。その一方、社長本人がボランティアで福祉事業を行ってきた経験があり、サハリン州と北海道の聾唖者同士の交流をサポートした。その際、サハリン側の代表に心から感謝され、翌年再会した際には、彼の子息を紹介された。その息子は現地最大のトラック物流業者のオーナーであり、サハリンプロジェクト関係の受注も少なくない。さらに現地で日本語を学ぶロシア人学生のホームステイ(ワーキングホリディ)を自発的に受け入れた。昨年サハリンを訪問した際、その学生の両親宅で行なわれた歓迎ホームパーティーで「あなたの将来のビジネスに不可欠な人」として紹介されたのがエクソン社米国人幹部であった。㈱せきはらは今のところ業務を受注した経験はないが、サハリンではエネルギー関連の日本企業パートナーとして唯一リストアップされている。また、7月末にはこのエネルギー企業と共同で現地技術者セミナーを開催するなど活発な動きを見せている。是非とも来春から本格的に始まる資源プロジェクトの一端を担ってほしいと思う。

「サイショの第一歩、ニ歩、三歩」

上記の2社の例でいえることはまず、自分の出来る範囲で分相応なアプローチをしていること。それが継続の秘訣でしょう。それも最終的な到達目標をキッチリと立てているので、単なる友好交流で終わっていない。この他、函館や稚内などでも長年蓄積した人的交流がビジネスにつながる例が出てきている。

その一方、北海道の大手建設会社が大手コンサルなどと共同で「サハリンプロジェクト」関連の見積りをだしたのもの、ローカルコンテンツ(ロシア企業優先のルール)など基本事項にも応答できず、現地企業のお笑い草となっている例もある。資料作りや翻訳に多大なコストと労力を費やしただろうに。

今回のテーマは「サイショの第一歩」。まずは、自社は何ができるかを説明する能力をもつ。そのコスト競争力を把握し、将来展望を見極めること。非常に簡単なことのようだが、地元企業に一番欠けている。あと、常にアンテナを張ること。現在、ロシアビジネスの相談相手の中で一番困るのは、10年ぐらい前の知識ですべてを判断しようとする人たち。ロシアは制度もビジネス感覚も日本の数十倍のスピードで変化している。そこを理解してもらうのが一番難しい。ロシアビジネスの「第二歩」は固定概念を捨てること。

そして三番目は「フットワークは軽く」。先月末、道内のある街の集まりで「サハリンプロジェクトが来年早々にも本格始動する」と話した。その際参加者(建設業社長)の一人が「そこまで進んでいるのだったら我々の出る幕はないな」と結論付けた。確かにそうかもしれない。でも私は覚えている。昨年、同じ会合で同様な話をした際、「まだ動向が未確定だから当面は様子見しかないな」と纏めた参加者と同一人物であったことを。