朝鮮民主主義人民共和国が世界経済を救う

|朝鮮半島

荒唐無稽なタイトルだと思われたかも知れない、あるいは気が振れたのかと。「国内の経済と暮らしも立て直せない国が世界経済を救う?!…」、そんなお叱りの声も聞こえて来そうだ。だが本人は、パラドクシカルな表現を使ったつもりも無く、いたって正気かつ正論のつもりである。

物価および賃金の引上げを含む経済管理方法の改善措置(5月11日付内閣指示により7月1日から実施されたとされる)に始まり、第7回南北閣僚級会談共同報道文の発表(8月14日)と南北経済協力推進委員会(8月26日~29日)の合意にそった南北鉄道連結のための同時着工式(9月18日)、その前日には小泉総理の訪朝ピョンヤン宣言、さらに19日には朝鮮中央通信が新義州特別行政区の創設にかんする最高人民会議常任委員会政令の発表(9月12日)を伝えた。この2ヶ月余りは、矢継ぎ早のニュースに息もつけない程だ。その中に拉致問題での信じがたいような結果が含まれるのが残念でならないが、これを認めて謝罪したことも一方では大きな変化なくして有り得ないことだったと解したい。

さて、これら一連の出来事を結びつける「キーワード」は「北朝鮮の窮状」である。もはや改革・開放の道を選択するより他にない、同族の南やかつての友邦からの支援には限界があり日本との正常化=援助を急がざるを得ない状況だ、と言うのがそれである。一時の苦境を脱したとはいえ北朝鮮の経済がいまだ困難な状態にあることは否定しがたい。では、拉致問題・不審船問題の解決と引き替えに経済の窮状に手を差し伸べるべく訪朝と正常化交渉の再開を決意したのだろうか。もちろんこれは重要な問題ある。さらに、「ミサイル(正確な名称は多段階ロケット”白頭山”)」の発射猶予期間の延長と核合意履行の約束を引き出すことを条件にアメリカに促されたことも既知に属する事実であろう。

しかし、誰もが知っているであろう(だがあまり語られない)もうひとつの大きな動機がそこにはある。かつて数多の人々がその意義と可能性を説き、手立てを講じ、時期を待った。だが、千載一遇の時と思われた10余年前の冷戦崩壊はそれを実らすことが出来ずに終わった。そして今、スティーヴ・マックウィン演じる「パピオン」の主人公がついに孤島から脱出する波を見つけたように、日朝にもその波が訪れたのである。この波を見出し、ひとつの流れに変えたのは、南北朝鮮の指導者であり、プーチン大統領と江沢民国家主席であり、さらにそこにはEUの御歴々の姿も見えてくる。そして小泉総理もそこに加わった、と見たい。

彼らが見出したのは、鉄道(金大統領は”アイアン・シルクロード”と呼んだ)と道路、通信やガスのラインで結ばれた成長の北東アジアであり、平和と安定の新たな構図である。言うまでもないが朝鮮半島はその要に位置している。もはや世界経済を救えるのはイラクへの攻撃や新たな戦争ではない。そこに大規模の新規需要があると信じるのは、「恒久的戦争経済」の亡霊にとり憑かれているようなものだ。

日朝首脳会談での合意はかならずや新たな時代の幕開けを告げる画期的な出来事として歴史に刻まれるであろう。ただし、双方が誠意を持って臨み、アメリカも変わることが条件ではあるが。

タイトルを変えなくてはならないようだ。「日朝の正常化が世界経済を救う」と。

(2002.9.27記)