「香港の価値」

|中国

香港パッシング

香港返還から5年、中国華南や華東デルタの繁栄を背景に、「香港パッシング現象」を取上げるメデイア報道が目立つ。香港の優位性が失われ、上海に取って代わられる日が近いことを喧伝する声も有る。

事実、広東省に既に5万社の香港系企業があり、華南地区に進出する外国企業も香港でワンステップを必ず置くというわけでもない。

交通インフラも香港オンリーでなく、中国国内のインフラが利用されつつある。先月(6月)には、広州と米国西海岸に初の国際コンテナー航路が開通し、2,500TEU級5隻が投入され、これで中国―米国が12時間で結ばれ、その輸送コストは香港経由よりずっと割安になるという。

香港が誇る・最先端設備を持つ世界最大級の国際貨物センター(空港)・世界最大の取扱量のコンテナー施設(港湾)もその地位が脅かされているかのようである。

また、NNA社が5月初~6月初にかけて、香港の日系企業(有効回答96社)に対し行ったアンケート調査によれば、今後の香港での事業規模について、①分からない42.7%、②縮小方針30.2%、③拡大方針20.8%であり、香港での事業に強い不透明感と縮小方針を持つ企業が72.9%に達している。外資ラッシュで賑わう中国大陸と比べるとまるで敗者と勝者である。

ビジネスフレンドリー

しかし、香港のビジネス環境と中国大陸のそれを比べてみると、その違いは歴然としている。

  • 特別扱いやえこひいきのない自由で公正な競争
  • 汚職のないクリーンな政府
  • 世界有数の金融センター
  • 資本の流出入に対する無規制
  • シンプルで一貫性のある税制(企業が支払うのは16%の収益税で、損金繰越の制限なし、個人所得税は最高15%、付加価値税や売上税なし、キャピタルゲイン課税なし、配当金・利子への源泉徴収なし、etc.)
  • 「開かれた市場」、即ち関税・割当て、除外規定など一切無し、内外とも投資制約なし、外国為替管理規制なし…、
  • 完璧な法治…etc.

これらは中国がWTO加盟を果たしたとて容易には達成出来ない。

この香港のビジネスフレンドリーな環境を享受すべく、香港にアジア本部か支店・支社を置く日本企業は2001年末は693社と1999年の482社から44%増加している(香港貿易発展局)という。シンガポールから香港にアジア事業本部を移転する外国企業も多い。

今年1~6月の香港の対中投資は4,841件(前年同期比32.8%増)と好調であった。6月の香港新空港の貨物取扱量も昨年同月に比べ25.4%の大幅増、輸出を示す貨物積み込み量は33.9%増加した。貿易港として開港以来150年、中国大陸への「南大門」ゲートウエイはなお健在である。

このように国際金融・ビジネス都市として変貌し発展を持続する香港を見るにつけ、中国大陸の北方に同様の機能を持つゲートウエイが出現すれば、北東アジア経済圏の形成と発展が加速されることは間違いないのだが…、その兆しはまだ見えていない。

(以上)