メコン川から北東アジア協力を考える

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8月初めから3週間、学生40数名を連れて中国雲南省昆明市に滞在した。愛知大学現代中国学部のユニークな課外授業の一つである「現地調査研究」のためである。学生が中国現地の関係行政機関、企業、団体、農家、少数民族部落などを直接訪問し、中国語で調査するのである。今回は4回目で雲南省が選ばれた。

雲南省には中国語で瀾滄江といわれるメコン川が南北に流れている。今回の調査ではメコン川流域開発に関する雲南省の人々の反応を調査することも重要なテーマであった。ミャンマー、ラオス国境に接するシーサンパンナ州にも飛んで、瀾滄江を肉眼でみて、打洛というミャンマーとの省級の辺境貿易地区にも足を運んだ。

事前に行った昆明市を中心とする130社の企業幹部のアンケート調査では、9割近くがメコン川流域の開発に好意的反応を示した。そのうち45.3%が流域の経済発展に期待し、次に水力発電(17.0%)、3番目に生活用水の確保(13.2%)に関心があるとした。

水力開発では、雲南省内のメコン川部分の上流に9ヶ所、中下流に8ヶ所のダム建設計画がある。うち漫湾ダムは国、省の電力公司並びに紅塔集団の投資で完成し、3ヶ所は建設中である。完成後はミャンマー、ラオス、タイにも電気を供給することになっている。

メコン川は長らく「戦乱の川」と呼ばれてきたが、1992年10月にアジア開発銀行(ADB)の主導によって、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムに中国(雲南省)、ミャンマーを加えた第1回閣僚会議がマニラで開かれた。96年12月にはASEANは「メコン川流域開発協力会議」を設置し、爾来中国とASEAN諸国とのFTA(自由貿易協定)が10年後に締結する運びとあいまって、ますます注目されてきた。日本も円借款を軸に協力している。

東アジア通貨危機があったにもかかわらず、メコン川流域の開発が順調に進展している現場をみて、なぜ北東アジアの経済協力(日本、韓国、北朝鮮、中国東北部、ロシア極東、モンゴル)が必ずしもダイナミックに進捗しないのか考えてみた。

第1は地理的条件である。メコン川流域諸国は陸続きで、河川開発そのものが発展の支柱になっており、国益でもある。他方、北東アジアには関係諸国が集約して接しておらず、経済的結集ができる自然的条件が弱い。

第2は、メコン川諸国は発展途上国として経済レベルがやや均等しており、経済開発という共通の目標を打ち立てやすい。北東アジアは経済格差と人口格差が大きく共通の経済目標が拡散するきらいがある。

第3は、中国もインドシナ3国も市場経済を本格的に実施しているが、北東アジアではすべての国がそうでない。そのうえ、南北朝鮮の分断、北方領土問題と冷戦構造は隠然と残っている。経済協力の前に信頼の醸成がまず基本となる。

第4は、メコン川流域開発には外部機関が協力に熱心である。ADBの金融支援、日本、米国も熱心である。北東アジアには開発支援のための金融組織がなく、日米欧も静観の姿勢である。

以上の点を踏まえると、メコン川流域開発は当面は交通インフラの整備と水力発電の建設である。北東アジアは相互の貿易拡大から直接投資の環境整備が必要と思われる。