大統領の極東訪問をめぐって

|ロシア

8月末、V.プーチン大統領が極東ロシアを訪れた。モスクワ等の中心地から離れている極東地方には大統領が来ることがめったになく、こうした訪問がこの地方の山積している問題を解決し、アジア太平洋地域との交流を深める突破口になることがいつも期待される。今回の訪問が上げた効果を判断することは時期尚早だが、極東地方の開発や隣国との連携戦略に関するいくつかの注目すべき動向を指摘することができる。

第一に、大統領は極東地方を「ロシアの最も特殊な管区」(「不凍港があり、隣は急速に成長しているアジア太平洋地域...」)と評し、事実上、中央政府によるその「特別扱い」の必要性を認めた。政府は今、連邦プログラムという、財政資金を投入する特定の事業を減らしているが、極東地方発展プログラムは維持される。

第二に、2010年までの間、極東地方のGDPを倍増し、60万人の新規雇用機会を創出する画期的な課題が打ち出された。このことにより、産業構造の高度化・付加価値化、技術革新、北東アジア等との連携強化を重視する姿勢が示されたことが評価できる。例えば、極東海洋自然保護区を視察した際、大統領は外資を導入しながら、海洋物の生産と輸出を積極的に拡大する必要性を強調した。また、沿海州のケトビー湾で2,400haの水域を持っている増殖会社「ネレイーダ」を訪れ、高度の技術の導入をメインテーマとして取り上げた。ネレイーダ社はロシア科学アカデミー極東支部の研究所と提携し、生産構造の付加価値化・多角化を進めている。産学連携の成功例といえる。増殖物はイガイ、ホタテ、コンブに、最近、ナマコやエビ類が加わった。

第三に、エネルギーと交通という、極東ロシアの大問題に本格的に取り組む意向が示された。特に、他の地方から流入する高価な石炭の依存体質から脱皮し、極東自体の天然ガスおよび水力という豊富な資源を活用することに焦点を当てた。さらに、世界のどこよりも大きいといわれている、代替エネルギーを利用する極東ロシアの潜在力を活かす考えを示した。具体的には、カムチャツカ州で風力発電所が建設される。

他地域までの遠距離によって極東の住民に孤立感が生じることは許されない、と大統領は強調した。空港等の交通インフラの整備や通信ネットワークの高度化により積極的に努める必要があり、そのため、各省が担当する国の投資事業の予算を優先的に使うことになろう。

第四に、V.プーチン大統領と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正日総書記とのウラジオストク会談が行われた。これは2000年以降、3回目のロ朝首脳会談となった。ロシアは北朝鮮の国際社会への統合を前進させる努力を活発化している。対朝政策に関連する日ロ協調の兆候も見えている。今回、プーチン大統領は、拉致問題などに関する日本側の憂慮を金総書記に伝え、日朝関係の正常化を訴えたそうである。

経済協力の面では韓国と北朝鮮を通る鉄道を整備し、シベリア鉄道と結びつける大ブロジェクトが取り上げられた。その実施はシベリア鉄道の貨物輸送量の増加につながる。一方、極東港湾の貨物取扱高が減る恐れがある。結局プーチン大統領は、このプロジェクトを実施する考えを示した。「ロシアがやらなければ、我々のパートナー中国がやる」からである。しかし、それと同時に極東の港湾を稼動させる対策を考えなければならない。専門家レベルでロシアは朝鮮半島を貫く鉄道の整備にすでに関わっている。ロシアの専門家は最近、北朝鮮の日本海沿岸に沿った支線を改修する提案をまとめた。