ロシアビジネス 春遠からじ

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都市の地盤沈下

ここ数年、札幌の経済的な地盤沈下が加速度を増して進んでいる。大手企業の支店廃止、本州大手の金融機関や建設会社の合併に伴う事務所や職員の削減などは他の地方都市同様の悩みである。さらに札幌の場合、地域経済の衰退に伴い、各企業の支店の位置付けや権限や業務内容も失礼ながらレベルダウンが著しいと感じる。

例えば、大手商社の場合、北海道支社を現地会社にするところが増えている。”現地密着型できめ細かいサービスが可能になる”という謳い文句だが、誰も総合商社にそんなものを期待していない。それは地場の問屋に任せばよい。総合商社に期待されるのは、グローバルな視点や中央動向に関する情報、さらにスケールメリットを活かした流通体制の確保である。商社金融という機能も期待されるが、地方子会社の場合、その会社自体に与信能力がなく、親会社の庇護でしか大型案件は進められなくなっている。

看板に偽りあり

まだ本体の支店として残っている企業でも、支社長の社内のポジションが低くなり、発言力を失っている例も多い。かつては取締役へのステップポジションだったのが、現在は札幌支店在勤中に大手企業の取締役になる例は殆ど見られなくなっている。その結果、本社のCEOで札幌や北海道の現状を知るものが居なくなるのである。

スタッフの体質も変わっている。いわゆる大手商社で「わが支店には貿易実務を理解する者はおりません」といわれた時は唖然とした。その他、外為の分からない銀行や英語対応のできない旅行代理店などという大手企業が続く。どこが国際都市サッポロなのであろうか。ここで何を言いたいかといえば、東京を頂点とするピラミッド構造の経済体制の崩壊が顕著に現実化しており、それを前提にした地方経済の発展は存在しないということである。とくに国際戦略において北海道という選択肢は加味されていないのが現実である。

ロシアビジネスの変化

このオピニオンのコーナーはロシアと日本の交流がテーマである。話題をそこに戻そう。北海道でのロシアビジネスといえば木材、水産物、石炭などの輸入と中古車の輸出というのが相場であった。今も基本的な流れは変わらないが、中身にも登場人物にも変化が見られる。そこに、サハリン州で進む大陸棚資源開発プロジェクトの影響は見逃せない。

まずは輸出商品の変化。中古車も徐々に高級なものが扱われるようになり、新品が入るようになった。とくにプロジェクト関連企業はオフロードタイプの4WD車を数台まとめて買い上げる。中古重機も徐々に大型化し、プラント単位での引き合いが増えている。幸か不幸か、北海道には建設機材や設備の売却を希望する企業は後を絶たない。自動車についても港湾地区の中古業者から多様なニーズに対応できる自動車ディーラーへと移り、さらにサハリン州の過酷な道路環境を想定して、メーカー自らカスタム化に乗り出すケースも見られている。使用言語もロシア語から英語へと移行しており、ロシアビジネスを志す企業の裾野も広がった。Eメールやデジカメなど電子媒体の普及で、重機やプラント、機械部品の取引システムにも変化が見られる。また、数兆円といわれるプロジェクトが背景にあることによってロシアビジネスの資金的裏付けが出来てきている。

新たな道を拓く

このような中、新たな時代の国際ビジネスの兆しが見られる。国際ビジネスを商社や大手銀行の専売特許と思い込んでいた地場企業が、必然性から自ら船荷証券や契約書をつくりはじめた。決済手続きを学ぶようになった。欧米企業との取引の際、商社を窓口にしようとしたら、相手側から「商社」を経由する理由を問われたのがきっかけとなった企業もある。仲介に入った大企業が与信的に問題があるからと、プロジェクト関連企業から直接取引を求められた地場企業もある。また、輸入ビジネスでも大手傘下では商品が手に入らなくなったため、直接外国企業と取り引きを始めた例もあった。

人も会社も新たな一歩に進むとき、理念ではなく、必然から決断することが多い。国際都市やグルーバリズムなどの掛け声では動かなかった地場企業が、いま否応なく変化を強いられている。東京中心の経済的ヒエラルキーから弾き飛ばされた結果、北海道は新たなそして貴重な一歩を踏み出したのではないだろうか。明るいニュースの少ない昨今、これを喜ばしい変化と受け止めたい。