動き出した巨大プロジェクト なるか、北海道企業の起死回生

|ロシア

スタートラインに立った北海道企業

ERINAのオピニオンコーナーに寄稿させて戴いて1年あまり。ロシアを語るというより、地方都市、地場産業の現実を嘆く場となっていた。しかし今回はちょっと趣が違いますよ。

1月30日、北海道新聞社朝刊は道北・湧別町の西村組がサハリン-2プロジェクトに参入すると報じた。サハリン-2プロジェクトとは、現在サハリン島北東部で進められる石油・天然ガス開発事業のひとつであり「サハリンエナジーインベストメント」社が推進している。同社の株主はロイヤルダッチシェル(55%)、三井物産(25%)、三菱商事(20%)となっており、小泉首長が訪ロした際、日本の対露投資の例として強調されていたものである。

サハリン-2プロジェクトは1994年の生産物分与契約が結ばれた後、1997年にファーストオイルが出荷され、現在も夏場は原油商業生産がされている。しかしながら、天然ガス事業に関しては最終ユーザーが決まらないことやパイプラインの所有権に関する企業側とロシア政府の意見相違などにより、1年ほど着工が遅れていた。それが今年に入り急に動きが活発化している。ロシアでは、昨年から「小泉首相訪ロ以降プロジェクトは進展する」と実しやかに語られていたが、それが現実になっている。また、一部報道によると東京ガス、中部電力など日本の大手ユーザーとの契約に目処がついたとされ、これが引き金と考えられる。

得意技で勝負

今回、西村組が参画する事業はサハリンエナジー社が資金負担する浚渫工事である。現場はホルムスク(旧真岡)の漁港。総工費は9億円程度で、工期も3ヶ月、作業員数60名というのは北海道内の港湾工事に比較しても決して大きなものではない。

しかし、サハリン-2プロジェクトだけでも総額1兆円を超える投資が見込まれる他、サハリン-1や続く3、4、5などの事業を含めると数兆円レベルの事業になるだろう。今回の現場であるホルムスク漁港に隣接するホルムスク商業港でも近く今回の5倍程度の工事がある。その前哨戦として意味合いは大きい。

西村組は北海道湧別町という人口5,500人ほどの町に本社を置くが、道内有数の港湾建設業者であり、技術力や先見性では定評がある。今回の受注に関しても、同社ならではと賞する声も多い。

新聞報道によると、今回の元請けとなる五洋建設が道内企業に下請けを発注した要因の一つに「寒冷地での業務経験」があげられている。一昨年の同じ時期に小規模浚渫工事がホルムスク港で行われたが、その際に参加した本州企業は寒さと機材の違いに苦労したと聞いている。その優位性と大手ゼネコンへのセールスプロモーション活動で受注を果たした西村組に対し敬意を払いたい。見知らぬロシアの作業に社内でも危惧する声もあったと聞く。そこで踏み出した一歩、我々がサハリン州に設置している「北海道ビジネスセンター」でも出来る限り応援したい。

ひとつの企業が動くことで波及効果は必ずある。タグボートや燃料など直接関連する企業のほか、通訳・翻訳、作業員にかかる物資調達なども既に発生している。何よりも他の企業にも、自分たちが今後出来ることを再確認する契機となれば素晴らしい。

北海道企業の優位性

寒冷地での作業や装備。北海道の企業なら当然のことながら、今回のプロジェクトではその経験が重要になってくる。凍結した作業環境、雪解け時の対応、さらに寒冷地で資機材、特に熱源の管理など北海道の優位性は確実にある。これらは北海道の企業や住民を苦しめてきたものである。それを克服してきた経験が役立つときがきた。そう思いたい。

さらにもうひとつ、北海道、いや日本の企業に優位な点があると、最近ある企業の方から聞いた。シェルもエクソンもロシアにおいて許認可の煩雑さに辟易している、というより理解できないそうだ。その問題に忍耐強く対応できるというのは世界中でも日本企業しかない。日ごろ、国内の複雑な許認可に疑問を持たずに(?)対応する日本企業は世界で唯一、この問題に対応できる。それが日本企業のメリットだそうだ。

海外での事業経験のなさ、価格競争力、語学の問題など道内企業のハンディキャップはもちろん多い。しかし、豪雪や寒冷気候だけでなく、官僚国家の弊害まで競争力になるのだ。何が幸いするかわからない。何事もポジティブに捉えて前進すれば、道は拓かれるのではないか。甘い考えかもしれないが、そう期待したい。