「始まりの終わり」

|朝鮮半島

2004年は年始から朝鮮半島情勢が活気を帯びている。朝鮮各紙新年共同社説の「総攻勢の年」という位置づけに象徴されるように、南北、朝米、朝日関係および国内経済において攻勢と取れるような積極的な動きが目立っている。ある月刊誌の「次の10年はこうなる」という特集に「金正日体制崩壊の瞬間」というタイトルがあったが、朝鮮民主主義人民共和国の立場から見ると、いわゆる体制の「終わりの始まり」ではなく新しい時代の「始まり」へのステップが「終わり」に近づいているということを強く感じる。金主席逝去後の「苦難の行軍」をへて1998年の新憲法制定と人工衛星発射で産声をあげた新体制により数年来、着実に準備されてきたビジョンが、その現実化への最終局面を迎えているということだ。

振り返ればこのような動きは、2000年以降「新しい思想観点、新しい思考方式」というスローガンの登場とともにしだいにはっきりと表面化する。

最初に着手したのは、中国・ロシアとの関係強化だ。金正日総書記の電撃的な中露訪問と両首脳との会談、北京と上海およびシベリア鉄道を利用したロシアの主要都市と極東地域の視察は、かつてのような蜜月関係を復元するとともに東北アジアにおける地域経済協力への足場作りであったといえよう。

もっとも身近な国際環境を整えた上で次に進められたのが、民族の悲願である統一にむけた南北関係の歴史的転換だ。南北の首脳会談と6.15共同宣言は、核問題をめぐり朝鮮半島を取り巻く情勢が極度に緊張する中でも、南北間の交流と協力は、たえることなく進展する確固とした土台となった。

これらにもとづいて朝鮮は、残された国際関係上の歴史的懸案である米国および日本との関係改善に本格的に乗り出す。趙明緑国防委員会第一副委員長とオルブライト国務長官の相互訪問と「朝米共同コミュニケ」の発表、「朝日ピョンヤン宣言」にいたる朝日間接触の始まりである。

そして、このような環境整備を前提として、2002年以降満を持したように社会主義経済管理システムの改善と特区の相次ぐ設置等の実利主義の原則にもとづいた経済改革がスタートする。

以上の流れを整理すると「金正日21世紀構想」とでもいえるようなビジョンが浮かび上がってくる。それは①歴史的に大国の利害関係衝突の焦点となってきた朝鮮半島を取り巻く「東北アジアの平和と安定、相互協力」、②分断の長期化によりはかりしれない悲劇がうみだされ統一的発展が阻害されてきた「南北朝鮮の和解、協力、統一」、③政治軍事的緊張により経済生活上の忍耐を強いられてきた北の地での「経済復興と強盛大国建設」である。そしてこれらは朝鮮民族にとって、植民地半世紀・分断半世紀で特徴付けられる受難の20世紀から自主・統一・繁栄の21世紀への民族史の転換という意味を持つ。

順調に進むかのように見えたこの流れの前に立ちはだかったのが、ブッシュ政権の対朝鮮強硬政策であった。「悪の枢軸」規定と「核先制攻撃も辞さず」との圧力によって構想実現への動きは失速し、停滞を余儀なくされた。朝日ピョンヤン宣言以降、内外の期待を裏切って朝日関係の改善が頓挫したのも、これと密接に関連している。その後、核問題をめぐる朝米間の攻防戦が続いてきたのは周知のことだ。

朝鮮側からみれば、朝米関係は自らのビジョンを実現するための最大かつ最後の関門である。すでに経済改革もはじまり南北間には共同宣言にもとづいた交流協力の枠組みがある。中露とは伝統的な友好関係が、朝日間にもピョンヤン宣言がある。最大最後の関門を突破した先に、新時代の始まりがある。

年頭の朝鮮の論調をみると、今年を朝米関係の総決算の年にしたいという強い意志がうかがえる。事実、核問題の推移は、米国による不可侵の保障と朝鮮による核計画の放棄という同時行動にもとづいた朝鮮半島の非核化以外に解決の道がないことを、時をおうごとにより明白にしている。

「始まりの終わり」は間近だ。今年、核問題の平和的解決と朝米、朝日関係の改善という劇的な展開により、統一へ向かう南北朝鮮を中心に東北アジアの新時代が幕を開け、朝鮮民主主義人民共和国における実利社会主義が本格的に始動するというシナリオは、私の初夢だけでは終わりそうにない。