はじまった中国人の「国際観光」

|中国

先日、中国南部の都市広州地域から来た中国人旅行ツアーが九州を旅行している光景がテレビで放映されていた。旅行観光客たちは温泉や日本食を楽しんだり、スーパーでの買物を楽しんだりしていたが、記者の「どのぐらいのお金をもってきたか」という質問に、旅行観光客のうちの3人は、それぞれ50万円、60万円、90万円と答えていた。旅行観光客たちがそのスーパーで消費した一人平均の金額は20万だったという。こう見ると、この旅行グループが日本に落としたお金の総額は無視できないはずで、将来、中国は日本にとって有望な観光市場になると期待されよう。

もっとも上で紹介された中国旅行グループは、中国でも特に裕福な階層の者に過ぎないであろう。日本人でも海外旅行で50万も60万も持って行く人は少ないであろうし、スーパーで20万円も買い物をする人は滅多にあるまい。

そもそも中国人が観光旅行で海外に出るようになったのは20世紀末のことである。最近の中国の統計によると、2000年の中国人の出国者数は約1,000万人で、5年前、1996年の出国者数の約2倍である(下表参照)。そのうち、私用旅行者は半分に近い4,841,800人である。この数字は中国の人口13億から見れば微々たるものであるが、もし中国国民が十分に豊かになって、その1割の1億3,000万人が海外旅行をするようになれば、それは少なからず世界の観光市場を潤すことになろう。

中国人の外国旅行者数(単位:人)
旅行者数 前年比
1996 5,060,700 12%
1997 5,323,900 5%
1998 8,425,600 58%
1999 9,232,400 9.6%
2000 10,472,600 13.4%
中国国家旅遊局の観光統計に基づき、作成

中国人口13億の1割が海外旅行をする、といえばあまりにも幻想的と思われるかも知れないが、かならずしもそれは幻想ではない。というのは、中国の国内観光市場が最近急速に成長しはじめているからである。統計によると、2002年に中国人で国内旅行をした人は約8億人で、それは人口の50%以上に相当する。こうした国内観光市場の成熟は、やがて海外観光へと繋がることは十分に考えられることで、世界観光機関(WTO)も、2010年の中国のアウトバウンド観光を3,030万人、2020年には1億に達すると予測している。

これだけの中国人が自分の意思に基づき、観光旅行のために国境を越えることは中国有史以来のことだといえる。もちろんこれで中国はマス・ツーリズム、マス・レジャーの時代に入ったとは言えない。しかし、近年の中国の順調な経済発展に伴って生活水準が向上し、価値観が変化したことは事実であろう。特に、経済的に豊かになった人の生活様式も変わりつつあり、観光旅行に出かけることは人々が目指すものの一つである。現在の中国において、外国旅行はさまざまな障害が存在し、まだ容易なことではないのが現実である。そのため、外国旅行はステータス・シンボルとなっており、あこがれの対象になっている。

1998年の統計によると、中国人の外国旅行の目的地の上位3位になっている地域は、1位が東南アジア(27.3%)、2位は欧州諸国(25.01%)、3位がアメリカ(13.2%)という順である。中国人の外国旅行は近距離が主であるが、遠距離の欧米諸国も全体の38%を占めることから、中国人の外国旅行は遠距離志向だということがわかる。

そのなかで日本への中国人旅行数も年々伸びているが、2001年の統計では中国人の出国者数1,000万人以上に対して約40万人に過ぎない。これは日中間の観光交流の課題ではなかろうか。

21世紀には中国は世界観光の送り出し主要観光市場になり、世界観光の構図を変えることになるのであろう。