はじまった中国人の「国際観光」

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中国人の国外旅行は、表に見られるように、1980年代の香港、マカオ、タイへの親族訪問から始まった。この親族訪問は、90年代にはシンガポール、マレーシア、フィリピンに広がったが、それは、政府指定の旅行社によるツアーへの参加という条件付きで許可されたものであった。このように、中国人の初期の国外旅行は、旅行先、旅行目的、旅行条件などに多くの制約があったが、1990年代後半からは、これらの制約が緩和され、表に見られるように、中国人旅行者を受け入れる国、地域も年々増加している。しかし地理的条件もあって、受け入れ国および中国人の旅行先は東南アジア諸国または地域が圧倒的に多く、2002年の統計によると、その年の中国人国外旅行者1660万人のうち、約40%は東南アジア諸国または地域への旅行者で占められていた。

中国人旅行者の受け入れに関して中国政府と合意した年、国または地域(2003年現在)

受け入れ年 受け入れ国/地域
1983~84 香港、マカオ
1988 タイ
1990~92 シンガポール、マレーシア、フィリピン
1998 韓国
1999 オーストラリア、ニュージーランド
2000 日本、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ブルネイ
2002 インドネシア、マルタ、トルコ、エジプト、ネパール
2003 ドイツ、インド、スリランカ、南アフリカ、モルディブ
ハンガリー、パキスタン、キューバ、クロアチア

しかし近年、かなり事情が変わってきている。中国のあちらこちらで大小の旅行フェアーや観光関連のイベントが行われているが、それらは、これまでは、外国人を中国に誘致する目的のものが主であったが、最近では、諸外国が中国人を誘致するものが目立つようになっている。とくに昨年来、日本をはじめ、経済先進国がブースを設け、自国の観光スポットを積極的に中国人に説明したり、観光地を紹介したりしている。中国発の情報によると、EU諸国が今年5月1日から本格的に中国人の観光旅行者を受け入れることが中国政府との間で合意したという。したがって今後は、中国人による欧州地域への旅行が盛んになるものと思われる。ただ一つの阻害要因は、中国人にとっては、欧州旅行は東南アジア諸国への旅行に比べて、距離、時間、費用面で負担が大きいことである。しかし、中国人には欧州旅行への憧れが強く、また、経済的にも、時間的にも余裕がある層が厚くなってきている。したがって欧州旅行は環境の整備さえ整えばブームになりうると思われる。中国人の一人当たりGNPは2003年には1,000ドルに達したが、中国政府が定めた社会発展目標が達成されれば、2020年にはそれが3,300ドルになるという。この目標が実現されれば、2020年までに中国人の国外旅行者数が1億人になるという、世界観光機関(WTO)の予測も夢物語ではなくなるであろう。さらに中国経済の発展に伴って、現在の春節、メーデー、国慶節の7日大型連休に、さらに年間10日間の有給休暇(現在検討中)が加われば、中国も余暇社会に近づき、国民の国外旅行熱は一層高まるであろう。

なお、表に見られるように、中国人観光旅行者の受け入れを日本政府が中国政府と合意したのは2000年であるが、残念ながら、それを契機に中国で日本旅行ブームは起こることはなかった。今後、中国人が日本旅行を敬遠しないよう、日中両国がともに対策を講じてほしいものである。