「注目される中国のFTA戦略」

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WTO新ラウンド交渉決裂と加速化されるFTA

さる9月10日~14日、メキシコのカンクンでWTO(世界貿易機関)の新ラウンド交渉(第5回閣僚会議)が行われた。今回の閣僚会議は2年に一度開催されるWTOの最高意思決定機関であり、世界共通の通商ルールの新しい枠組みを話し合う場で、世界中で注目されていた会議であった。今回のカンクン閣僚会議では①農業自由化 ②非農産品自由化 ③新分野(投資保護、競争促進、貿易円滑化、政府調達)について方向性を決定するべく交渉が行われたが、先進国と途上国の対立が激しく、交渉決裂という残念な結果となった。さる10月18日のタイ・バンコックでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚声明で貿易自由化交渉(新ラウンド)の再開を呼びかけてはいるが、今回のメキシコ・カンクンでの決裂により、2年程度の合意延期は避けられないとの見通しもある。

今回の決裂を受け、すでに二国間や地域レベルでのFTAに締結へ向けた動きが活発化している。現在、東アジア地域においてもシンガポール・タイなどを中心にFTAへの取り組みを積極化している。その中で、中国が2001年12月のWTO加盟以降は、通商政策の軸足をFTAにへ移し積極的に推進しており注目される。

中国のFTA戦略

中国はFTAと2002年11月の首脳会議で「中・ASEANは2010年自由貿易圏実現を目指す」枠組み協定に署名している。これによると、2010年までに中国とASEAN6ヶ国でほとんど全ての関税が撤廃され巨大な自由貿易圏が実現する。さらに中国は、東アジアにおける理想的な地域統合はASEAN+3(日中韓)と考えており、日本・韓国へも働きかけを強めてきている。このほか、中国は最近ではインドや中央アジア諸国とのFTAにも今後検討を進めていく姿勢を示している。

こうした中国のFTAに政策は、長期的視点に基づく戦略的な動きであるとともに、具体的な対応は現実に即した柔軟なものであるように感じられる。周辺国と経済的協力関係を強化することで周辺国の中国への脅威感情を和らげながら影響力を高める一方で、国内の企業の改革を加速させ、国際競争力を強化させようとしている。

東アジア経済圏形成に向けて注目される中国の動向

経済産業省が最近行なった日本企業アンケート調査(2003年9月)によると、日本企業が東アジアで期待するFTAの組み合わせはASEAN+3(日中韓)が約47%と、日・ASEAN(16%)などを大きく上回る結果となっている。東アジア地域に生産拠点等既存の資産を多く持つ日本企業は、東アジア全体での収益確保を目指した最適生産・調達・販売を重視している。欧米企業がEU・NAFTAなどの地域経済圏形成によって大きな利益を得たように、日本企業の競争力強化につながるASEAN+日中韓FTAの実現を日本企業が期待していることの表れであろう。日本のFTAはシンガポールとの経済連携協定(EPA)のみで農業分野を包含した本格的FTAをメキシコと提携すべく交渉がなされてきた。10月中旬のメキシコ・フォックス大統領来日時に交渉完了・合意がなるものと期待していたが、農業分野が合意に至らず大変残念であった。メキシコとのFTAが日本農業分野での国内事情により交渉が長引くとASEAN、タイ、フィリピン等とのFTA交渉も同じような農業分野での問題があり、又、交渉相手先も日本とのFTA交渉を後回しにする懸念もあり、日本の製造業(国内)が輸出機会でいろいろと制約を受け、結果として、国内で製造し続けていてはグローバル競争に勝てないとの判断で、グローバルFTAネットワーク内の国・地域への製造シフトを加速させることが考えられる。

中国・アセアンを含めたアジア地域に多くの事業拠点を展開している当社も、ASEAN内との二国間FTAや、更にはASEAN+日中韓FTA締結が実現し、東アジア経済圏が形成されることを期待している。中国の積極的なFTA戦略は、今後のアジアにおけるFTA形成の台風の目とも言えるわけで、日本の政治も力強いリーダーシップで中長期の国益を考え、FTAネットワークの拡充を実現されることを強く望んでいる。