ロシアの下院選と間近に迫る大統領選

|ロシア

3月のロシア連邦大統領選の行方を占うまたとない機会が、昨年12月の下院議員選挙だった。

ロシアの連邦議会(国会)は、連邦会議(上院)と国家会議-ドゥーマ(下院)から成る2院制を採っているが、現在は、国民の直接選挙でその議員が選ばれるのは下院だけである。上院議員は、大きく2度にわたる改革によって、2000年末からは89の連邦構成主体の行政府と立法府の代表から構成されるようになっているからである。

プーチン大統領が自ら述べたように、この下院選挙は「大統領選と一体」をなすものと考えられていた。小選挙区比例代表並立制で行われる下院選挙には、23に及ぶ政党・選挙団体が参加した(プーチンは、エリツィンもそうであったように、どの政党にも属していない)。結果は、大統領与党系の予想以上の勝利と最大野党「共産党」の半減以下に特徴付けられる。450議席のうち、与党系とされる「統一ロシア」が222議席、「自由民主党」が38、「祖国」が37、「人民党」が19、計316となった。「共産党」は53、改革派と称される「ヤブロコ」は4、「右派勢力同盟」は3、左派の一翼をになう「農業党」は3、その他が71である。12月末に召集された下院で4会派が結成された。その内訳は、「統一ロシア」が300、「祖国」が36、「自由民主党」が36で与党系が計372議席と8割以上を占め、ほかに「共産党」が52、無所属23、欠員3である。

「プーチン支持」の代名詞と言っても良いこのような結果をもたらした要因は、豊富な選挙資金に加えテレビ3局を手中にしたプーチン政権のマスコミ支配も無視できないが、なんと言っても表面的にはロシア経済が順調な伸びを見せていることにあると言えるだろう。プーチンが大統領に就任した2000年から2003年までの4年間、石油の輸出に支えられた実質GDP伸び率は平均で6%を超える勢いである。

プーチン支持の傾向は各種世論調査にも現れている。「全ロシア世論調査センター」によると、「次期大統領選でだれに投票するか」との問いに対し「プーチン」と回答した割合は、昨年下院選直前の11月には67%、選挙後の12月には75%、今年の1月にはなんと80%にも達している。

野党側に巨額の選挙資金を援助し、自身も将来は政治の表舞台に進出する意欲を持っていると見られていた大手石油会社「ユコス」のホドルコフスキー前社長が、2003年10月に脱税などの容疑で逮捕された。「事件」前の9月の同じ世論調査ではプーチン支持が75%、「事件」後の11月は前述の通り67%と減じたものの、選挙結果から見る限り、この「事件」がプーチンとその与党に悪影響を与えたとは考え難い。この「事件」に対しては、プーチンの「政治的策略」との見方が、国外のみならずロシア国内にもあったものの、ロシアの有権者が、富を独占するオリガルヒ(新興財閥)に対して「ノー」を突きつけたと見ることができるだろう。ロシアの人たちはだれもが、どんなオリガルヒでも叩けばほこりが出ることを知っている。今日のロシアでは、法律に則って税金を払っていたら企業は成り立っていかないことをみんなが知っているからだ。

大統領選立候補者の登録は1月6日に締め切られた。10人の候補者が登録を済ませたが、現職のプーチン以外これといった有力な候補は見当たらない。投票総数の50%以上を獲得した者がなければ、上位2者による決選投票に持ち込まれる制度になっているが、その可能性も少なく、1回目の投票でプーチンが再選されるのはまず間違いのないところだ。それよりも関心は、プーチンがどれだけの票を得るか、翼賛的になった下院の支持と国民の圧倒的な支持率を背景に、3選を禁止している憲法第81条を改め再選以降も大統領職を続けようとするかどうかに集中している。