対ロ交流へのポールポジション・根室

|ロシア

私が、父親の経営する会社を継承するために故郷である北海道根室市に戻った1991年(平成3年)2月に、ロシアとの相互主義による立ち入り規制が緩和され、重要港湾根室花咲地区に入港するロシア船が飛躍的に増加し、ロシアとの相互交流が急激に進展することになりました。

「朝日に一番近い街」根室市は、文字通り北方領土返還運動原点の地であり、ロシアとの間に戦後50年以上経過した今も未解決の国家主権の問題を抱える地でもあります。この根室の地からロシアとの人的交流と経済交流が加速度的に発展するとは、当時、現地にいる我々も想像しませんでした。まさにそれは1792年(寛政4年)にラクスマンがロシアの正式な使者としてエカテリーナⅡ世号に乗り根室を訪れて以来、約200年後の大きな国際化の波が北海道の最東端のここ根室に押し寄せてきた始まりにも思えました。時を同じくして平成4年より「ビザなし交流」が始まり、北方4島との相互交流が元島民を中心とした日本人とロシア人現島民との間でスタートしました。この交流の拠点都市となっているのも根室市であります。

平成4年に、上陸するロシア船員への情報提供と地域住民との交流の場として「根室インフォメーションセンター」が開設され、翌年には「北方四島交流センター」が日本とロシアの交流拠点施設として建設されました。

また、現在ではロシアとの貿易において、ここ数年、年間約2,000隻、約20,000人に上るロシア人が、人口僅か33,000人の根室市に上陸しており、これはある意味において流動的な人口の増加であり新しいマーケットの創造でもあります。主にカニ、ウニを中心とした魚介類の輸入が中心ですが、油、食料品などの日常雑貨から酒、タバコ、衣類、電化製品、最近では建設資材などありとあらゆるニーズがあり、それらを購入して持ち帰ります。ある意味では、平成7年ごろから平成12年ごろまでは、私見ではありますが根室のバブル(カニバブル?)により基幹産業である漁業を中心にその恩恵に預かり、業績を回復したり飛躍的に伸ばしたりした企業・団体も多くあったに違いありません。

平成12年に根室市、根室商工会議所、根室信用金庫(現・大地みらい信用金庫)がまとめた統計では、貿易輸入額および波及効果分を合わせた経済効果額は93億8,800万円に達すると推計されています。しかしこの数字も表に出ないもの、情報収集不可能なものを含めると、かなりの上方修正となるに違いないというのが当時多く聞かれた意見でした。

現在、ロシアとの水産ビジネスはよりシステム化され、資力と情報収集力、人脈と行動力のあるものが成功を収めている様に思えます。商業ベースにおいても、ロシア人顧客の購入スタイルも個人の比率よりも団体、企業単位のものに変化してきている様にも思えます。私は、ロシアビジネスを一言で表現するならば、リスクマネージメントだと感じております。しかしリスクマネージメントとはリスク回避とだけ理解していては、ロシア人、ロシア企業との取引は上手くいかないでしょう。きっとロシアビジネスはリスクコントロールであり、ビジネスのスタイルから中で働く人材まで共存・共創する方向で考えていかなければ成功しない様に思えてなりません。

平成10年に私の会社で初めてロシア人の女子社員を採用し、以後翌年にもう一人、そして2人目の女子社員が日本人と結婚した後、平成12年にロシア人男性社員を1人採用しました。後に2人は夫婦となり当社社員として今でも立派に働いております。信頼関係と相互理解は言葉にするのは簡単ですが、構築するには多くの時間とエネルギーが必要だということを肌で感じております。昨年、2人の間にはめでたく子供が生まれ、根室市で生まれた民間外交の賜物の様な、私にとってもこれまでの企業活動がお金や物ではなく、新しい生命の誕生という結果としてもたらされたことに感動した出来事でもありました。

この根室という街は、国内の中央から見ればまさに東の果てではありますが、ロシア側から見れば一番近い入り口であり、ロシア外交において色々な意味からもポールポジションにあると私は思っています。この街の特殊性は、北の海の味覚ももちろんですが、まさに対ロシア、北方領土問題の原点の地であることです。「街づくりと日露交流」「日露交流と北方領土返還運動」というテーマについて未来を見据えた具体的取り組みが、今まさに必要とされています。本年1月にプーチン大統領と小泉総理大臣との間で締結された「日ロ行動計画」の6つの柱を、具体的に政府レベル、大企業レベルからどう地域に、民間企業、団体、個人レベルに落とし込むかが大切であり、「絵に描いた餅」にならない様に、今のところ安定したプーチン政権2期目の来年度以降に標準を合わせていく必要があるのではないでしょうか。根室市はまさにこの「日ロ行動計画」を色々な角度から取り組み、更なる返還運動の推進と未来の豊かな地域創造のためにも、ベンチャービジネスマインドをもってほしいと考えます。上記の経済効果の統計をまとめた根室市、根室商工会議所、そして大地みらい信用金庫において、ロシア人公務員、社員、行員が誕生する日がそう遠くないことを期待しております。