「中国特需」と日本経済への影響

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戦後、中国と直接的または間接的に関わり、日本の景気動向に大きな影響を与えた「特需」は3回ある。50年代の朝鮮戦争(中国とアメリカは主な戦争相手国)に伴う「朝鮮特需」、70年代のベトナム戦争(アメリカの戦争相手国・ベトナムのバックは中国)の激化に伴う「ベトナム特需」、21世紀初頭中国の新たな経済拡張に伴う「中国特需」である。

2003年から続いている「中国特需」はこれまでの2回と違い、中国が関わった戦争に伴う「戦争特需」ではなく、中国の「平和的台頭」による「平和特需」である。この「中国特需」はいま日本の景気回復の牽引役となり、多くの日本企業に利益をもたらしている。

「中国特需」は2010年まで続く

高度成長と国民生活水準の急速な向上によって、旺盛な国内需要が2008年北京五輪、2010年上海万博まで続くと一般的に見られる。「中国特需」は主に次の2つの分野から発生する。

1つ目はインフラ関連の公共事業分野である。2010年まで中国のビッグプロジェクトの計画・建設が相次ぎ、インフラ投資だけでその総額は2兆ドル以上にのぼる。そのうち、北京五輪、上海万博など超大型インフラ案件17件だけで投資額は5000億ドルにのぼる見通しで、日本企業もこうした膨大な「中国特需」から大きく恩恵を受ける筈である。

2つ目は個人消費分野の特需である。高度成長と人民元の切り上げという2つの要素を考えれば、1人当たりGDPは03年の1090ドルから10年の2000ドル以上へ拡大する見通し。国民の豊かさの実現によって、「3M」(マイカ-、マイホ-ム、モバイル・テレコム)ブ-ムに象徴される個人消費の急速な拡大が期待される。

景気回復の陰の主役は中国

昨年から日本経済は持ち直しの動きが続いているが、景気回復を支える陰の主役は実際、中国特需である。

財務省の貿易統計によれば、2003年日本の総輸出は前年に比べ円ベ-スで4.7%増(米国向けは▲9.8%)となり、対中輸出は前年比33.3%増(ドルべ-スでは43.6%)を記録した。日本の総輸出増加分2兆4533億円のうち、中国向け増加分は1兆6580億円にのぼり、全体の67.6%を占める。香港向け増加分(2802億円)を加算すれば、総輸出増加分の約8割が中国の貢献である。

また、2004年3月期上場企業の中間決算を調べれば、業績が良い業種の多くも実際、中国の経済拡張と大きく関わっていることがわかる。鉄鋼、工作機械、建設機械、石化製品、海運などの業種では、いずれも急速な経済成長を遂げる中国の旺盛な需要に支えられ、増収増益の結果となっている。

要するに、日本が米国経済のみを注目すれば良かった時代は確実に終り、中国マ-ケットを抜きにして景気動向も産業発展も語れない時代が訪れてきた。

「世界の工場」から「巨大市場」へ

中国はいま「世界の工場」から「巨大市場」へと姿を変えつつある。

輸入で見た場合、中国市場規模の急速な拡大が明らかである。02年に2950億ドル(世界6位)だった輸入規模は、03年に前年比39.9%増の4128億ドルに膨らみ、フランス、日本、イギリスを一気に抜き、米・ドイツに次ぎ世界第3位となった。06年にドイツを凌ぎ世界第2位へ躍進することも視野に入る。

過去10年間の輸入実績をべ-スに計算すれば、2010年に中国の輸入規模は1兆ドルにのぼる。換言すれば、向う7年間(2004-10年)、輸入の形で発生する「中国特需」はト-タルで約4兆ドルにのぼり、02年日本のGDPに相当する。

この4兆ドル規模の「中国特需」というパイは、日米欧など諸国がその分け前を争う形となる。いかにこの4兆ドル規模の「中国特需」というパイからより大きな分け前をもらうかが、日本の景気動向を左右するポイントとなり、日本企業の重要課題でもある。