エネルギー資源と日中関係 - 求められる戦略的発想からのアプローチ -

|中国

最近、世界的な石油価格の高騰が新聞紙上を賑わしている。石油価格高騰の要因として、短期的にはイラクやパレスチナなど中東情勢やナイジェリアの内紛などの影響が考えられるが、中長期的には中国などアジア諸国を中心とした世界的な石油需要の高まりによる将来的な石油需給の見通しの厳しさがその理由ともなっている。

近年の中国のエネルギー需給は、日本でも新聞報道などで話題となっているように、華東、華南地域を中心とした深刻な電力不足、モータリゼーションに伴う石油需要の急増、石炭供給の逼迫と価格高騰など、様々な面で問題が顕在化してきている。こうした問題は、これまで中国から石油、石炭を輸入してきていた日本にも影を落としはじめている。

そのひとつが大慶原油の輸入停止である。大慶原油は、中国最大の油田である大慶油田から産出される原油で、日本との取引は1973年から始まった。30年にわたって供給されてきたこの原油が、中国国内での石油需要の高まりによって原油輸出余力がなくなったとの理由で、今年(2004年)1月から供給が停止された。大慶原油は硫黄分が低く、残渣分が多いという独特の性状から、日本では主に発電用燃料として使われてきたが、最近の発電事情から石油に対する需要が減少傾向にあり、この供給停止による影響はそれほど大きなものではなかった。ただ、日中友好の象徴のひとつであった大慶原油の取引がこうした形で終了したことは、関係者にとって衝撃的な事実であったといえよう。この事態が生じた背景には、中国の石油需要の急増という公式見解のほかに、あくまでも推測にすぎないが、日本政府によって後発的に表明された東シベリア原油パイプラインの太平洋ルートの提案に対する中国側の報復ではないかとの見方もある。

このほかにも、日中間のエネルギー資源をめぐる対立として東シナ海での天然ガス資源の問題がある。こちらは尖閣列島の領土問題や経済専管水域など政治的、外交的問題も絡んでいて、問題はさらに複雑化している。

現在、エネルギー資源としては、中国から日本へはわずかな南海の原油と、年間3000万トン余りの石炭が輸入されている。石炭については、数量的にはこれまで比較的安定的に取引が行われてきていたが、昨年頃から中国国内での供給逼迫を受け、対日輸出へも一部炭種・銘柄で契約不履行という事態が生じた。中国では、石炭や原油などのエネルギー資源については輸出許可品目として厳格な輸出制限措置がとられており、今後も中国国内の状況によっては対日輸出に影響がでる可能性はある。石炭に関していえば、今のところ石油ほど政治的な要素が絡んでおらず、これまでは純粋な取引き上の問題として比較的順調に解決することができた。しかし、今後、石油のように政治的要素が絡んでくると、問題は複雑化するだろう。

日本はエネルギー資源のほとんどを海外に依存しているが、中国も海外への依存率が急速に高まりつつある。こうしたなかで、中国はエネルギー資源に対して明確な国家戦略を打ち出しており、政府の強力なバックアップの下、中国の石油企業が海外の石油資源の権益を積極的に獲得するなど、政府と企業が一体となった動きをみせている。日本のエネルギー政策は、果たしてこうした戦略的な発想をもって策定され、実際の企業活動に結び付いているのだろうか。

中国側による東シナ海でのガス田開発の問題が顕在化したときにも、日本側には中国側の行為に対して理論的に反論できる正確な地質データや資料がなく、中国側にそれらの提示を求めているが、これはあまり感心したやり方とはいえない。この海域での中国のやり方の是非は別として、中国に対する「外交的配慮」から、東シナ海の地質調査を実施してこなかったのは、エネルギー資源に対する日本の「認識の甘さ」、「戦略的発想の欠如」ととられても仕方がない。

東シナ海の問題に限らず、一般的に日本は官民ともに自国の国益に対する認識が薄いような感じを受ける。今後、日中間のみならず、アジア全体を巻き込んだ形でエネルギー安全保障問題を考えていかなければならない時代のなかで、中国やその他のアジア諸国と対等に議論するためには、戦略的な発想からの行動が求められる。