「政冷」・「経熱」と日中経済をみる目

|中国

「政冷経熱」という言葉が、昨今の日中関係を表す表現として、新聞報道などでよく見かける。政治的には冷え切っているが、経済的には熱い関係にあるという意味であるが、最近の中国側の報道では、「政冷経涼」という表現も使われ、「政冷」の経済への影響に警鐘を鳴らしている。

2004年の日中貿易額をみると、中国側の統計では前年比25.7%増の1,679億ドル、日本側の統計(日本の円ベースである財務省統計を日本貿易振興機構(ジェトロ)がドル建て換算)でも前年比26.9%増の1,680億ドルに達し、過去最高の金額になった。また、中国商務部の統計によると、日本企業による対中直接投資額は、実行ベースで前年比7.9%増の54.5億ドルに達している。こうした数字のみをみると、大変な勢いで日中間の経済関係は発展、拡大しているように思える。事実、2004年は、日本にとって、香港を含めると中国は米国を抜いて最大の貿易パートナーとなり、2005年は中国単独で日本の最大の貿易相手国になると予測されている。

ところが、中国にとってこれまで最大の貿易相手国であった日本は、EU、米国に抜かれ第3位となり、EUや米国との貿易額の伸びは、日中貿易額を遥かに上回る大幅な伸びをみせた。つまり、経済的には日本にとって中国の存在感が高まる一方で、中国にとって日本の存在感は逆に低くなったという状況を表している。中国の2004年の貿易総額は、中国商務部の発表した速報値では、前年比35.7%増の1兆1,547億ドルに達し、日本を抜いて、米国、ドイツに次いで世界第3位になった。「世界の工場」として成長した中国が、家電製品などの製品輸出を増やしたことに加え、国際的な原材料の高騰によって輸入額が増加したことが、貿易総額の大幅な伸びにつながった理由である。これまで、経済大国として国際的に高い地位を築いてきた日本にとって、こうした事実は衝撃であったといえよう。

対中投資についても貿易と同じことがいえる。2004年の外国企業による実行ベースで対中投資額は、前年比13.3%増の606億ドルに達し、国別では香港・マカオが同7.9%増の195億ドルとトップで、次いで英領バージン諸島が同16.5%増の67億ドル、第3位は韓国で同39.2%増の62億ドルであった。昨年3位であった日本は韓国に抜かれ4位に転落している。圧倒的シェアを占める香港・マカオは別として、他の国の伸び率が日本のそれを大きく上回っているのが実状である。

中国の目覚しい経済発展と経済的な国際的地位向上のペースに、日本がいまひとつついていけない裏には、やはり「政冷」の影響があると思わざるを得ない。前述の客観的データは現実として直視すべきであるが、中国側の主張に対しては、真剣に受けとめる姿勢を示すことは重要であるものの、彼らの言い分をそのまま鵜呑みにすべきではないし、また、中国側の考え方を無視して、日本側の主張を一方的に繰り返すことも愚かなことである。そこに、日本としてしっかりした基本的立場を固めておくことの重要性が認識されるところである。そうすることで自国に軸足をおいたバランスの取れた判断ができるようになる。

中国では、民営企業の台頭など、経済構造が社会主義計画経済から市場経済へと大きく転換しつつあり、日中間の民間ベースでの経済交流は益々活発化している。時代の流れをみれば、「政治」は政治、「経済」は経済と割り切れるような時代になったのかと錯覚するのも自然なような気がするが、それでも「中国」は中国であることに変わりない。「政冷経熱」などと、「政」と「経」があたかも全く別物であるような目で日中経済をみると、大きな問題を見落とすことにもなりかねない。「政冷経熱」は、あくまでも一時的な現象を示しているにすぎない。常に「変わる中国」、「変わらない中国」をしっかりと見極め、大局的な観点から全体を把握しつつ、日中経済という個別の問題に焦点をあてることで、これまで見えていなかった部分、見落としていたところなどが明らかになってくるのではないだろうか。