安易な経済成長から脱皮が求められはじめたロシア

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98年のロシア金融危機からV字型の経済回復そして高成長を持続し、豊富な資源に恵まれるロシアは、BRICsの一カ国として取り上げられるなど世界各国から注目されている。政治経済状況が混沌としていた90年代のロシアビジネスには慎重であった日本企業も、現在は活発化させている。2003年の日露貿易額は、新生ロシア誕生後最大59億ドルとなり、2004年も好調に推移し90億ドルを超えるとみられている。石油、ガス以外にも、中国経済の急速な発展により需給が逼迫した石炭等の資源への投資も検討している。また、資源だけでなく、トヨタ自動車などが現地生産の意向を表明したように、これまで低調であった製造業部門への投資の動きも出始めている。国際協力銀行が毎年行っている海外投資調査アンケート「2004年版」によると、今後3年以内の有望な直接投資先としてロシアが米国に次ぐ6位(2003年の10位、2002年16位)となったように、日本企業の関心が急速に高まっている。

しかし、最近の主要経済指標をみると、ロシア経済成長の勢いに陰りが出始め、石油価格が上昇すればするほど経済が成長するという相関関係が弱くなってきている。逆に、石油価格は以前より上昇しているにもかかわらず、9月以降のGDPの伸びは鈍化している。その結果、今年の経済成長は昨年の7.3%よりも低い6.5-6.9%、来年も更に低い5-6%に留まると見られている。成長が鈍化している主な理由は以下の通り。①ユーコス事件の影響による資本流出の増加(03年30億ドル、04年予測120億ドル以上)や、石油の輸出税の強化によって、石油企業の収益が伸び悩んでいるため、製造業部門の投資の伸びが鈍化していること。②既存の石油パイプラインや積み出し設備がフル稼働のため、原油輸出量の増加ができないこと。③エネルギー国内価格の高騰によるインフレの加速化や、経常収支の大幅黒字によるルーブル高で、国際競争力が低下し、その結果鉱工業生産の伸びが鈍化していること。④今年半ばに発生したミニ金融危機の影響により、建設業界の資金繰りが悪化し、当部門の伸びが低下したことである。

グレフ経済発展貿易大臣らは、経済成長が減速しているととともに高成長を達成するには、経済改革・構造改革を加速させなければならないと警告し始めている。これまでのように高い石油価により牽引されてきた「安易な高経済成長」時代は終わり、ロシア政府による適切な政治・経済政策の実施がなければ、近年享受してきた高成長への復帰は困難という転換期を迎えている可能性が高い。近々、地方知事の任命制などの政治システムが変更されるが、どのような影響がビジネス・経済にでてくるかは不透明である。現在のプーチン周辺を支えるグループの経済路線の対立を勘案すると、経済改革を加速化させ、ビジネスインフラ、投資環境を整備し、過度にエネルギーに依存した経済構造から脱却出来るかは微妙である。

といって過度に警戒する必要はない。ロシアの外貨準備高は石油価格の高騰により10月下旬に初めて1,000億ドルを突破し、輸入14ヶ月分の規模となった。また財政収支の黒字も好調に推移し、予備資金としての安定化基金も予想以上のテンポで積み上げられており、ロシアの対外債務返済能力は問題ないレベルに達している。また石油価格も暫くは高いレベルで推移すると見られることから、ロシア経済が急速に悪化し、危機的状況に陥ることはない。しかし、ここ数年好調であったビジネス環境が変化する怖れもあるため、同国の経済・政治動向には、これまで以上に注視し、リスクとチャンスの両方を複眼的に見る必要がある。