本の話

|モンゴル

モンゴルの人々はかなり読書家である。月々の出版点数もアジアでは人口比にすると上位にあることは間違いない。それを支えているのは識字率である。2000年のアジア文化センター資料で調べた人がいる。モンゴル人の成人識字率は男性99.1%、女性98.8%で中国の男91.7/女76.3はもちろん、ベトナム、スリランカも上回る。確か1970年頃、識字率が100%近くでユネスコの賞を受賞している。そのためか高学歴の人は普通著書を持っているものである。友人のほとんどは自著を有し名刺がわりに本をくれる。

80年代の初めウランバートルで勤務していたとき、著名な作家ロドイダムバの『トンガラック・タミル(清きタミル川)』という小説が出版された。これは余談だが、対日貿易の窓口を何十年も勤めてこられた財務省のナサンボヤンさんは同氏の息女で、父上の出身地アルタイ市の博物館にはナサンボヤンさんが幼少の頃弾かれたピアノが展示されていた。大部の純文学であるその本が出版された直後、勤務先の運転手が読んだかというので未読だと答えると、ベストセラーで売り切れた同書を一冊手に入れてくれた。当時新刊書は社会全体の関心事になる状況であり、50年代、60年代のわが国の状況に近かった。

モンゴルでは洋書といえばロシア書で、わが国の洋書以上に広い階層によく読まれて来た。社会主義時代、スフバータル広場には半分がロシア書の第一書店があり、ここには学術書が古本を含めかなりあった。ガンダン寺の西の高台第3区に、裏に倉庫つきの大きな本屋があり、何度か倉庫に入れてもらい書籍をあさったことがある。スフバータル広場を出て郵便局から空港方面へ向かうチンギスィン・ウルグン・チョロー道のすぐ西側に民主党の党本部がある。昔このビルは書店の総本部で、1965年初訪問のときドルベースで本を売ってくれた。日本でもモンゴルの新聞書籍が入手できるよう同書店と神田のナウカ書店との仲立ちをしたことを懐かしく思い出す。当時も今も一般の有力な書店はデパートであり、外部書店が何軒か入っている。また、現在師範大学東に街頭書籍販売が出ているが、往時は美術館の西で販売していたものである。

市場経済となり本屋の多くは閉店してバーになってしまったと心ある人を嘆かせている。他方、ADMON社とか世界水準の出版印刷屋が排出し競争するようになった。新たな出版文化が生れ出てきている。書籍も美しいカラー印刷となった。最近新しい本のデパートが出来た。インテルノム書店である。まだあまり人が知らない昨年10月、場所を探しあてて入ったところ、丸の内オアゾには及ばないものの、すっかりあか抜けたディスプレイと店員で営業していた。2階はもっぱら輸入ものの洋書、ロシア書、古書である。オチルバト前大統領とも店内で出会った。モンゴルは動いている。